そっちの世界は、なんて残酷なのだろう。私はまだ17年しか生きていないのに、殺されなければならない。どうしてなんだろう。
……私は、父親に虐待を受けていた。お母さんが亡くなってから、お酒に溺れ、暴力を振るわれたり、暴言を吐かれることが多くなった。
「いいか、由里。俺は新しい女と結婚するんだ。くれぐれも今までのことを口に出すな。言ったら……分かってるよな」
「……はい。分かってます」
父親なんかじゃない。ただの悪魔だった。私は誰でもいいから相談したかった。けれどそれがバレて、殺されたり襲われたりしたら……そう思うと、本当に怖くて言い出せなかった。
「え、浅田くんのお母さんと……?」
父親の再婚相手は、同じクラスの浅田くんの母親だった。私達は、義理の兄妹。なんだか不思議な感覚だ。
「なあ、俺のお母さんと新川の親父が結婚なんて反対なんだけど。新川も反対だろ?」
ある日、浅田くんにそう告げられた。
「え、私は賛成だよ。私はお父さんが幸せならそれでいいんだ」
私は嘘の言葉を放った。お父さんなんて、消えてしまえばいい。幸せになんてなってほしくない。けれど口には出せなかった。
そして、お父さんが浮気したという噂があった。まあそうだろうな、と思った。だってあの悪魔だもの。浮気なんて当然だよね。
「お前の親父、浮気してたんだけど。本当に新川はそれでいいの?」
「うーん。最低だと思うけど、お父さんが幸せならいいかな。浅田くんのお母さん、あんまり優しくないんだもの……」
そう答えた。実際、浅田くんのお母さんもお父さんと同じような感じだった。ただ単に私を気に入っていないのか、お父さんに脅されていたのか分からない。私にだけ冷たかった。
浅田くんは、とても悲しそうな表情をした。ごめんね、浅田くん。浅田くんは何も悪くないのに。傷つけてしまってごめんなさい。
そして、12月24日のクリスマスイブ。明日は恋人の健ちゃんとのデートだ。そのために、私は今日、美容室やマツパへ行ったり、ネイルサロンをしてきた。
地獄のような家には帰りたくなかったが、明日のために我慢しよう、と思った。
「浅田くん、ただいま。ごめん、明日さ――」
その瞬間、私のお腹にドッ、と刺さった感覚がした。
「……さよなら、新川由里。お前のことを一生許さない」
声が聞こえて前を見ると、浅田くんがナイフを持っていた。……私はその瞬間、床へ倒れ込んだ。
気づくと、私は透明になって町を彷徨っていた。ああ、私は死んだのか……。そう、絶望した。
健ちゃんは、何度も私のお墓らしきところへ来てくれて、花束を添えてくれて。やっぱり自慢の恋人だった。
どうしてこんなにこの世界は残酷なのだろう。もっと、もっと生きたかったな……。私は、この残酷な世界で生きている大切な人を、ずっと見つめていた。
……私は、父親に虐待を受けていた。お母さんが亡くなってから、お酒に溺れ、暴力を振るわれたり、暴言を吐かれることが多くなった。
「いいか、由里。俺は新しい女と結婚するんだ。くれぐれも今までのことを口に出すな。言ったら……分かってるよな」
「……はい。分かってます」
父親なんかじゃない。ただの悪魔だった。私は誰でもいいから相談したかった。けれどそれがバレて、殺されたり襲われたりしたら……そう思うと、本当に怖くて言い出せなかった。
「え、浅田くんのお母さんと……?」
父親の再婚相手は、同じクラスの浅田くんの母親だった。私達は、義理の兄妹。なんだか不思議な感覚だ。
「なあ、俺のお母さんと新川の親父が結婚なんて反対なんだけど。新川も反対だろ?」
ある日、浅田くんにそう告げられた。
「え、私は賛成だよ。私はお父さんが幸せならそれでいいんだ」
私は嘘の言葉を放った。お父さんなんて、消えてしまえばいい。幸せになんてなってほしくない。けれど口には出せなかった。
そして、お父さんが浮気したという噂があった。まあそうだろうな、と思った。だってあの悪魔だもの。浮気なんて当然だよね。
「お前の親父、浮気してたんだけど。本当に新川はそれでいいの?」
「うーん。最低だと思うけど、お父さんが幸せならいいかな。浅田くんのお母さん、あんまり優しくないんだもの……」
そう答えた。実際、浅田くんのお母さんもお父さんと同じような感じだった。ただ単に私を気に入っていないのか、お父さんに脅されていたのか分からない。私にだけ冷たかった。
浅田くんは、とても悲しそうな表情をした。ごめんね、浅田くん。浅田くんは何も悪くないのに。傷つけてしまってごめんなさい。
そして、12月24日のクリスマスイブ。明日は恋人の健ちゃんとのデートだ。そのために、私は今日、美容室やマツパへ行ったり、ネイルサロンをしてきた。
地獄のような家には帰りたくなかったが、明日のために我慢しよう、と思った。
「浅田くん、ただいま。ごめん、明日さ――」
その瞬間、私のお腹にドッ、と刺さった感覚がした。
「……さよなら、新川由里。お前のことを一生許さない」
声が聞こえて前を見ると、浅田くんがナイフを持っていた。……私はその瞬間、床へ倒れ込んだ。
気づくと、私は透明になって町を彷徨っていた。ああ、私は死んだのか……。そう、絶望した。
健ちゃんは、何度も私のお墓らしきところへ来てくれて、花束を添えてくれて。やっぱり自慢の恋人だった。
どうしてこんなにこの世界は残酷なのだろう。もっと、もっと生きたかったな……。私は、この残酷な世界で生きている大切な人を、ずっと見つめていた。