朝起きると憩いの宿屋が騒がしくなっていた。
「おはようございます。何かあったんですか?」
「あー、うるさかったかな? 今日は週一回の孤児院に行く日でね」
憩いの宿屋の店主達は週一回孤児院へ行き炊き出しを行っている。
「今日は特にやることもないので僕も行っても良いですか?」
今日は依頼も受けずに休みにしていたため、俺は同行してもいいかと確認した。異世界の孤児院もどんな状況か気になるしね。
憩いの宿屋の人達には俺が料理ができることを伝えてあるため、人手が増えることに関しては大歓迎だった。
「向こうに行ったら何を手伝えばいいですか?」
「とりあえずここで食材切ってからあとは炒める状態だけにして持って行こうか」
今日は野菜と肉の炒め物とスープ、パンを作ることになっているらしい。
俺は言われたように野菜を切り、向こうに着いたらスープで使う水を用意することになった。
♢
「ケントくんがいて助かったわ」
「ほぼホーランさんとマッシュさんがやってましたよ?」
俺は黙々と大量に置いてある野菜を切っていただけだった。
「それでも早くできるから助かったぞ? これからが本当の戦いだけどな……」
どこか二人の顔は深刻そうだ。
しばらく歩くと孤児院が近くなったのか、子どもの賑やかな声が聞こえてきた。
「ケントここだ」
「思ったよりも大きいですね……」
小さな託児所程度だと思っていたが、そこには小さな学校が目の前にあった。
「本日もよろしくお願いします」
ここの孤児院で面倒を見てる女性が声をかけてきた。
「今月もどうだったかしら?」
「今月もダメでした……。皆さまにもご迷惑おかけしてすみません」
女性は申し訳なさそうに頭を下げていた。何の話をしているのかわからなかったため、話には入らずそのまま聞いていた。
その中で聞こえてきたのは生活するするために必要な資金が足りないということだった。
「何かあったんですか?」
「実はな――」
簡単に孤児院がある理由と今の孤児院の現状を話し出した。
ここ王都にはトライン街とは異なり貧困地区はなくある程度経済が回っているため、基本的には普通に生活できるほど仕事があふれていた。
それなのになぜ孤児院があるのか……。
それは貴族街が関係する。貴族街があるからこそ地位を上げようと浅はかな考えの平民と性欲処理のために女を抱く貴族との子がたくさんいる。
平民と貴族との間に出来た子は基本的には母親が一人で育てるかもしくは処理されている。
それでも育てられない理由がある子は孤児院に捨てられてしまう。
そんな現状を国王は知っているからこそ資金は国費から賄っていた。
「お金が足りないってことですよね?」
「そうなんです。昔と違って何か経済的に余裕がないのでしょうかね? ところで――」
「あっ、ケントと言います」
「私はここの孤児院で働いているエイマーです」
エイマーは優しそうな見た目で歳も若かった。
話によると孤児院は三人の女性で経営をしており、その中の二人は過去にここの孤児院から卒業した子のため実質は一人で昔からやりくりをしているのはエイマーだった。
そんなエイマーだからこそこの孤児院に支給されるはずのお金が少なくなっているのを疑問に思っていた。
「ケントは心配するな」
「そうよ? 今日は手伝って貰えるだけで助かるからね」
「今日はケントくんも手伝ってくれるんですね。ありがとうございます」
手伝うだけでこれだけ喜ばれるということはとんでもない子達ばかりが揃っているのだろうか。
「じゃあ俺達は準備をしてくるから」
俺はついていくとどこか運動場のような場所についた。
「さぁ、始めようか」
「ここでやるんですか?」
「そうだよ? そのために食材は事前に切ってあるのよ」
食材を事前に切っていたのは調理工程を省略する目的のみではなく、屋外で調理をするためだった。
「なんで外なんですか?」
「一応炊き出しという扱いでね。エイマーがどうしてもお金や食材を受け取らなかったから、ここで勝手にやれば文句を言われないからよ。それが今じゃ毎週の日課になっているわ」
エイマーもはじめは断っていたらしい。しかし経営するお金も足りなくなってきたことを知った二人は勝手に炊き出しをするようになった。
「じゃあ鍋に水をお願いね」
大きな鍋に水治療法を発動させた。すでに憩いの宿屋で勝手にお風呂を入っているが孤児院の子ども達は違った。
「おい、見たか!」
「見た見た!」
「あれ、魔法だよな? 初めて見たぞ」
「俺もだよ! しかもあいつ子どもだぞ」
どこかで話し声が聞こえてきたが俺はそのまま作業を続けた。
事前にスープの作り方は聞いており、特に難しくもなかったため軽く自分風にアレンジをすることにした。
言われた通りに作るとかなりの薄味になるからな。
「ケントくんそっちはどう?」
ちょうどいいタイミングで声を掛けられた。
「もう出来てますよ」
「わかったわ。みんな出来たわよー!」
大声で呼ぶと建物から各自お皿と器を持った子ども達が全速力で走ってきた。
その数は思ったよりも多くどんどん子ども達が出てくる……。
気づいた頃には三十人はいるのではないかと思うほどだった。
「おはようございます。何かあったんですか?」
「あー、うるさかったかな? 今日は週一回の孤児院に行く日でね」
憩いの宿屋の店主達は週一回孤児院へ行き炊き出しを行っている。
「今日は特にやることもないので僕も行っても良いですか?」
今日は依頼も受けずに休みにしていたため、俺は同行してもいいかと確認した。異世界の孤児院もどんな状況か気になるしね。
憩いの宿屋の人達には俺が料理ができることを伝えてあるため、人手が増えることに関しては大歓迎だった。
「向こうに行ったら何を手伝えばいいですか?」
「とりあえずここで食材切ってからあとは炒める状態だけにして持って行こうか」
今日は野菜と肉の炒め物とスープ、パンを作ることになっているらしい。
俺は言われたように野菜を切り、向こうに着いたらスープで使う水を用意することになった。
♢
「ケントくんがいて助かったわ」
「ほぼホーランさんとマッシュさんがやってましたよ?」
俺は黙々と大量に置いてある野菜を切っていただけだった。
「それでも早くできるから助かったぞ? これからが本当の戦いだけどな……」
どこか二人の顔は深刻そうだ。
しばらく歩くと孤児院が近くなったのか、子どもの賑やかな声が聞こえてきた。
「ケントここだ」
「思ったよりも大きいですね……」
小さな託児所程度だと思っていたが、そこには小さな学校が目の前にあった。
「本日もよろしくお願いします」
ここの孤児院で面倒を見てる女性が声をかけてきた。
「今月もどうだったかしら?」
「今月もダメでした……。皆さまにもご迷惑おかけしてすみません」
女性は申し訳なさそうに頭を下げていた。何の話をしているのかわからなかったため、話には入らずそのまま聞いていた。
その中で聞こえてきたのは生活するするために必要な資金が足りないということだった。
「何かあったんですか?」
「実はな――」
簡単に孤児院がある理由と今の孤児院の現状を話し出した。
ここ王都にはトライン街とは異なり貧困地区はなくある程度経済が回っているため、基本的には普通に生活できるほど仕事があふれていた。
それなのになぜ孤児院があるのか……。
それは貴族街が関係する。貴族街があるからこそ地位を上げようと浅はかな考えの平民と性欲処理のために女を抱く貴族との子がたくさんいる。
平民と貴族との間に出来た子は基本的には母親が一人で育てるかもしくは処理されている。
それでも育てられない理由がある子は孤児院に捨てられてしまう。
そんな現状を国王は知っているからこそ資金は国費から賄っていた。
「お金が足りないってことですよね?」
「そうなんです。昔と違って何か経済的に余裕がないのでしょうかね? ところで――」
「あっ、ケントと言います」
「私はここの孤児院で働いているエイマーです」
エイマーは優しそうな見た目で歳も若かった。
話によると孤児院は三人の女性で経営をしており、その中の二人は過去にここの孤児院から卒業した子のため実質は一人で昔からやりくりをしているのはエイマーだった。
そんなエイマーだからこそこの孤児院に支給されるはずのお金が少なくなっているのを疑問に思っていた。
「ケントは心配するな」
「そうよ? 今日は手伝って貰えるだけで助かるからね」
「今日はケントくんも手伝ってくれるんですね。ありがとうございます」
手伝うだけでこれだけ喜ばれるということはとんでもない子達ばかりが揃っているのだろうか。
「じゃあ俺達は準備をしてくるから」
俺はついていくとどこか運動場のような場所についた。
「さぁ、始めようか」
「ここでやるんですか?」
「そうだよ? そのために食材は事前に切ってあるのよ」
食材を事前に切っていたのは調理工程を省略する目的のみではなく、屋外で調理をするためだった。
「なんで外なんですか?」
「一応炊き出しという扱いでね。エイマーがどうしてもお金や食材を受け取らなかったから、ここで勝手にやれば文句を言われないからよ。それが今じゃ毎週の日課になっているわ」
エイマーもはじめは断っていたらしい。しかし経営するお金も足りなくなってきたことを知った二人は勝手に炊き出しをするようになった。
「じゃあ鍋に水をお願いね」
大きな鍋に水治療法を発動させた。すでに憩いの宿屋で勝手にお風呂を入っているが孤児院の子ども達は違った。
「おい、見たか!」
「見た見た!」
「あれ、魔法だよな? 初めて見たぞ」
「俺もだよ! しかもあいつ子どもだぞ」
どこかで話し声が聞こえてきたが俺はそのまま作業を続けた。
事前にスープの作り方は聞いており、特に難しくもなかったため軽く自分風にアレンジをすることにした。
言われた通りに作るとかなりの薄味になるからな。
「ケントくんそっちはどう?」
ちょうどいいタイミングで声を掛けられた。
「もう出来てますよ」
「わかったわ。みんな出来たわよー!」
大声で呼ぶと建物から各自お皿と器を持った子ども達が全速力で走ってきた。
その数は思ったよりも多くどんどん子ども達が出てくる……。
気づいた頃には三十人はいるのではないかと思うほどだった。