王都は少し進むと目の前に見えた。さすが王都と言うべきか夕方なのに門前の入り口には人がたくさん待っていた。

「全員のステータスを確認するぞ」

 門番は全員のステータスを確認するとすぐに王都へ入る許可をされた。

 犯罪歴があったラルフも現在は犯罪歴が消失したため特に止められることもなかった。

 王都に着くとすぐに宿屋を探しに行き、 ギルドは明日行くことにした。

「じゃあここでお別れですね」

「ケントくんのご飯ー!」

 リチアはカルロとリモンに引っ張られて冒険者ギルドに報告に行った。

「じゃあ俺達も宿屋を探そうか」

「はい!」

 宿屋を探すために周りの人に話を聞きながら良さそうなところを探した。

「少しいいですか?」

「なんじゃね?」

 俺はベンチに座っているお婆さんに声をかけた。

「どこか泊まるのにオススメな宿屋はありますか?」

 前世の職業柄なのか気づいたらお年寄りばかりに声をかけていた。

「おほほは、マッサージ上手だね。宿屋なら憩いの宿屋がオススメだよ」

「わかりました。それにしてもお婆さん肩凝ってますね」

 ついでにスキルを使いながら肩揉みをしてちゃっかり俺の名前を売りながら宣伝している。

「ははは、これでも現役の薬師だからね」

「うぇ!? まだ働いているんですか?」

「流石に治療院は無理じゃから保存が効くポーションや薬を中心にばっかじゃがね」

「冒険者なのでいつかお世話になるかも知れないですね」

 できればお世話にならない方向性ではいたいが何が起きるかわからないのが冒険者だ。

「ははは、助かったよ。またその時にマッサージでもしてくれたらオマケも付けて値引きもしてあげるよ」

 お婆さんはよっぽどマッサージを気に入ったのか、お店の場所と営業時間を教えて帰って行った。

 これは逆に宣伝されたのだろうか。

 その後集合場所に戻るとマルクスとラルフも同じぐらいに戻ってきた。

 いくつか宿屋を聞いたが、共通点は"憩いの宿屋"であった。

「じゃあ憩いの宿屋にしようか」

 俺達は憩いの宿屋に向かい部屋が空いてるか確認しに行った。





 憩いの宿屋は中心街から少し遠く、住宅街に近い王都の端にあった。

 トライン街でも貧困地区に住んでいたため、特に気にすることもなく憩いの宿屋は安心できそうだ。

「いらっしゃい!」

 声をかけてきたのは恰幅の良い女性だった。

「お客さんかい?」

「ああ。ここの宿屋が値段の割りに食事が良いと聞いてきたからな」

「ははは、中々コアなところを勧める人もいるんだな」

「そうなんか?」

「ああ、大体は王都の中心か冒険者ギルドの近くの宿屋に泊まる人が多いからな」

 基本的に宿屋に泊まるのは短期間で商売に来る人か冒険者が多い。あとはボスが受け入れてもらえるという理由で宿屋を決めたのだ。

「俺達が泊まる場所はあるか?」

「一人部屋か同部屋どちらにするか?」

「同部屋--」

「マルクスさんは一人部屋でお願いします」

 俺とラルフは重ねるように言ったためマルクスは少し落ち込んでいた。

「カレンさんも王都に来てるんですよ? 俺達は邪魔はできないですからね」

 俺達はニヤニヤしながらマルクスを見た。全員男だから気が使える家族でありたいからな。

 この数日でマルクスとカレンの距離が近づいていた。

 大人の二人が何をするのかを知っているからこそマルクスだけを別の部屋にしようとラルフと話し合っていた。

「お前ら!」

 流石に前世でそれなりの大人だった俺はお預け状態の辛さを知っている。

「じゃああいつが帰るまでな」

「はーい!」

「じゃあ、それでお願いします」

「わかったよ! お兄さんも彼女さんに無理させないようにね。ここはそんなに防音が効いた部屋じゃないからな!」

 憩いの宿屋の女性はマルクスの顔を見てニヤニヤしていた。

 流石にそこまでいじられると思ってなかったマルクスは少し顔を赤く恥ずかしがっているようだ。

「食事付きで一人銀貨五枚だよ。食事はどうするんだ? あとはお湯は一杯大銅貨一枚だ」

 日本円に計算すると食事付きの寝泊まりで5,000円、お湯は1杯100円程度だろう。

「食事は頼む。お湯は……裏庭とか借りれないか?」

「別に問題はないぞ?」

「ありがとう。あとで裏庭に風呂を頼むな!」

「わかりました」

 マルクスもお風呂がある生活に慣れてしまい、今では入らない方が気持ち悪いのだろう。

 これで王都の拠点地となる宿屋は決まりやっと体を休めるのであった。

 俺達はこの後部屋を分けたのを後悔した。

 その日の夜から隣の部屋に泊まっているマルクスの部屋から喘ぎ声と激しい音が朝まで聞こえていた。

 ずっと一緒に俺達と居たマルクスは我慢していたのであろう。マルクスは脳筋だけではなく絶倫も装備しているのだろう。

 この時初めて自分が成長しきれていない小さな体で良かったと感じた。