「………………っていうことがあってですね…………」
エルダは、アステラとマグダに、オーザックとの出会いからエルレリア開村までの一切を語った。
それについて、一部始終を興味深く聞いていた二人だった。
「なるほど…………緑色人というのは、人間なの…………か?」
「本人はそう言っていました。『同じ人間なのに、何故同種族に見下され、虐殺されなければならないのか』と。」
「確かにそうだな。同じ人間であるならば、その一方的な攻撃は可笑しい…………サルラス帝国…………何を考えているのか…………」
「国が関与しているんですか?」
「まぁ、その緑色人の素材は主に、帝国が高額で買い取っている。これなら、サルラス帝国国家自身が緑色人狩りを誘発させている様だ。全く。何を考えているのか。」
アステラは、そんなサルラス帝国に呆れた様子を見せた。
「あと、エリレリア村長のクレリアが、水魔法を使えて…………びっくりしましたよ。だっていきなり…………」
そのエルダの報告を聞いたマグダとアステラは、慌てて、エルダに言った。
「エルダ。その彼、クレリア村長の親は、王族や貴族か?」
「いや、そう言った話は聞きませんでしたが…………?」
「…………いいか、エルダ。この事は他言無用にして…………」
アステラがそう言いかけた時、マグダが突然立ち上がり、本棚の前に立った。
「何を…………?」
エルダがそう呟いたのも束の間。
バゴォォォン!
マグダがその本棚を殴り潰した。
「何をしているんだ?! マグダ!!」
突然の破壊に怒ったか、アステラも立ち上がり、その瓦礫の中から何かを漁るマグダの元へと行った。
「お前! いきなり何をっ…………」
アステラがそう言いかけた時、マグダは瓦礫の中から、小さな石を出し、アステラの眼前に突き付けた。
「魔石だ。」
マグダのその言葉に、アステラは顔を青ざめた。
「この魔力の雰囲気、効果。多分、ザルモラの盗聴魔法だろう。」
それを聞いたアステラは、絶望したのち、エルダとマグダに言った。
「二人で今すぐ、エルレリアへと向かえ! サルラス帝国に占領される前に! 早く!」
突然のその命令に混乱するエルダだったが、マグダは、その命令の真意が理解できているかの様にさっさと準備を始めた。
取り敢えずエルダも準備を済ませ、マグダと共に飛び立った。
「……で父さん。アステラ王のあの命令の真意は何なの?」
何も教えてくれないまま今に至るので、少し怒り口調でエルダは聞いた。
「簡単な話だよ。
先ずそのクレリアとやらは、貴族や王族の血を引いていない。ので、平民の魔力突発発現となる。エルダは王族である私の血をひいているから魔力持ちだが、彼は違う。
そしてサルラス帝国といえば、魔法研究で発展している大陸一の魔法発展国。そして未だに、突発的な平民の魔力発現の理由が判明していない。
どういうことか判るな?」
「その理由を探るため、盗聴していたサルラス帝国兵がエルレリアへ攻めクレリアを攫い、人体実験を行う可能性があると。そういうことか。」
「ご明察。」
マグダの説明のおかげで、今エルレリアに向かっている理由が理解出来た。
これを盗聴判明時点で思いつくなんて。流石アルゾナ王国の国王だ。
エルレリアまでかなりの時間がかかりそうなので、少し聞きなっていた事をマグダに聞いてみた。
「そういや、さっき言っていた、“炎獄牢”って何なの?」
「あぁ、それな。
先ずアルゾナ王国では、各属性魔法ごとの主な攻撃魔法の系統別に、名前が付けられていてな。その炎獄牢は、炎で壁を作ったりドーム状の檻を作ったりする、いわば、一枚の炎の板を繰る魔法の総称。他にも、火球を出す炎弾。炎魔法最高火力魔法“暁光蝶”なんて魔法もある。まぁ、最後に関しては、発動した後最悪命を落とすがな。」
「そんな魔法もあるのか…………」
エルダが、少しため息をついた。
「まだ時間がかかりそうだしさ、他の属性魔法の名前も教えてくれよ。」
「あぁ、わかった。次は雷魔法だが……………………」
――――――――――――――
その頃のアルゾナ王国。
マグダを見送り、アステラは、自室で休もうと移動していた。
その時、
ドォォォォォォォォォンンンン!!!!!
外で轟音が響いた。
そしてその後すぐに、
「敵襲ぅぅぅ!!!!!」
というアルゾナ王国兵の声が轟いた。
アステラは急いで外が見える場所に移動し、その敵を見下ろした。
そこには、一度目の侵攻の十倍程の人数のサルラス帝国兵がいた。
まるで、この二回目の王都侵攻を、最初から目論んでいたかの様に。
「……くそっ!」
マグダとエルダが不在の中、サルラス帝国の王都侵攻は再び行われた。