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「あの後、オーザックは、ルリアの死体を抱えて、村へ帰ってきたんだよ。」
クレリアが、ルリアを思い出してなのか、とても意気消沈している。
「その黄色人達は、全員オーザックが殺したのか?」
「あぁ、オーザックが言うにはそうらしい。もう、無我夢中に屠っていたと、そう言っていた。」
クレリアは、煙で真っ白な空を眺めて言った。
「あそこで黄色人から逃げれば、尾行され、村まで黄色人が侵入していただろう。だからオーザックは、あの場で、村を守る為、黄色人を殺した。自分の正義の為。だが、いざ村へ帰ってみると、『貴様のせいでルリアは死んだ』だの、『貴様が連れていかなければルリアは死ななかった』だの、遂には、『貴様があの時、リリじゃなくてお前が殺されておけば、リリもルリアも生きていたのに』と言われて、村を守ったのにも関わらず、皆から蔑まれ、軽蔑された。信頼を失った。だから、せめて私だけは味方でいようと思った。だが私は弱かった。オーザックがエルダと連れてきた時。オーザックの意見を通せば良かったのに。私は、『オーザックに肩入れした』と信頼を失うのが怖くて、オーザックを突っぱねた。」
クレリアが、涙を流しながら言った。
「あの時の私に勇気があれば。オーザックの意見を聞き入れていれば、此処で死ぬことは無かったのかもしれない。君とも、ずっと仲良く出来たのかもしれない。私に勇気がなかったせいで。オーザックの正義をちゃんと汲み取った筈なのに、こう言った時だけ突っぱねてしまう。」
深いため息が聞こえた。
「自分を蔑むのはやめてくれ。仮にもクレリアは此処にあった村の村長なのだから。胸張って復興に励めよ。そっちの方が、皆んなの士気が上がるってもんだ。」
エルダは、少し強めに、クレリアの肩を叩いた。
その時、木々の隙間から赤い陽の光が、二人を照らした。
その輝かしさは、クレリアの心情を、完全に否定しているかの様であった。
日も少し昇り始め、空も青がかった頃。
クレリアとエルダは、村民の寝ていた一時避難所へと到着した。
起床している村民もちらほらと見える中、ある顔立ちの整った女性が、クレリアとずっと話していた。
可愛い系と言うよりかは、清楚系と言った方が似合うその顔立ち。
冷徹な雰囲気を醸し出す彼女は、時々、エルダを睨んでいた。
数分後。
彼女が突然、少し早足でエルダの方へと歩いてきた。
「貴方がエルダですか?」
「あ、あぁ。そうだが…………」
彼女の顰めっ面と行成の呼び捨てに困惑した。
「えーっと……貴方h……」
「ラルノア・カートルと申します。別に覚えてくれなくても結構。」
そう言って彼女、ラルノアは、颯爽とその場を去った。
すると横から、のそのそとクレリアが寄ってきた。
「すまんな。私の娘が。」
「あの子がさっき話していた…………?」
「あぁ。ルリアの姉の、ラルノアだ。」
「彼女が………………」
エルダが、ラルノアにそっと視線を向けた。
「あの子はルリアが大好きでな。ルリアが死んだ時、あの子が一番悲しんどった。そしてその一件があってからラルノアは、オーザックを避ける様になって。そのオーザックの友人だから、ラルノアはエルダを嫌うのだろう。」
嫌いな人の信頼している人は、信頼出来ないのは、至極当然。
そう納得した、エルダだった。
そして、オーザックの事を良く思っていない村民も多数いる事から、ラルノアの様な対応をされるのではないかと、エルダは危惧した。
いや、抑も、黄色人である以上、忌み嫌われるのは当然か。
悲しい現実だが、受け止めなければいけないと、エルダは腹を括った。
信頼は、自分の力で勝ち取る物。他人の行動で決められる物ではない。
エルダは、気合を入れた。
今日から、村の再建に着手した。
初めの方は、村のお偉いさん達が集まって、村の構想を練る。
その間村民は待つしか無いので、皆、自由にしていた。
エルダはと言うと、村民に避けられてぼっちだったので、その構想会議にちゃっかり参加していた。
参加というよりかは、後ろの席で話を聞くだけで、発言はしない。
構想は、今日で練り切るらしい。
なので明日から、本格的に村の再建が始まるのだ。