オーザックは、ルリアに告白した。
 オーザックの行動力は凄かった。
 再会を果たしてから、僅か五日後の話である。
 この時のオーザックは、“フラれる”という選択肢が頭に無く、愛を伝えれば付き合えると、安直な考えで告白した。
 そしてそれに気付いたのは、告白中の事。
 傷つく準備が出来ていなかったので、突然の気付きに、一気に不安になった。

 だがオーザックは、ルリアの返答を聞いて、心の底から安堵した。



 ルリアとオーザックの噂は、瞬く間に村中に広まり、正式にクレリアに報告する前に、クレリアの耳に入っていた。
 クレリアは、オーザックを信頼していたので、反対どころか、「全力で応援する!」と、オーザックを鼓舞した。
 村の皆も、二人を祝福し、その日は、村全体で宴が催された。
 未だ二人とも子供であった為、お酒は飲めないが、それに飲まれた大人の相手はした。
 普段だったら面倒なことも、今の二人には、楽しくて仕方がなかった。
 
 その宴は夜通し行われた。
 酔い潰れた大人は地面で大股を広げて爆睡し、ついさっきまで耳が潰れるほど五月蝿かった会場も、今や物音一つ立たぬ程に静寂。
 皆が寝静まった頃、ルリアとオーザックは、清らかに笑い合いながら、和気藹々と喋り続けた。
 本当は永い数時間という時間が、パラパラ漫画の様に消えていった。



 次の日からオーザックは、ルリアと過ごす時間が多くなった。
 朝起きたら、ルリアがオーザックの家へと来る。
 オーザックは一人暮らしだが、ルリアは、家に(クレリア)(ラルノア)がいるので、朝早くからオーザックがお邪魔すると、文字通りお邪魔になってしまうので、ルリアがオーザックの家へ来るようになっている。
 オーザックの家で同居する話もあったが、お互い未だ子供な上、仮にもルリアは村長であるクレリアの娘なので、それなりに呼ばれる事も多々ある。
 そう言った時に迅速な対応ができるよう、ルリアはクレリアの家に住んでいる。

 ルリア直々にオーザックの家に来る事について。オーザックは、彼氏として申し訳ない気分になっていた。
「仕方の無い事なのだ」と自分に言い聞かせて、何とか罪悪感をもみ消しているけれど、やはり申し訳ない。
 なので、早朝に起きてクレリアの家に前でこっそり待ってみたり、早く起きてオーザック宅に向かう途中で驚かせたりと、自分も受身だけじゃないのだと、必死にアピールした。

 だが、どんな事があろうと、二人の関係性というのは揺らがず、それどころか、親密になってさえいた。

「将来は必ず結婚するだろう。」
 誰もが、そう考えて疑わなかった。




 付き合い始めてから一年が経ったある日。
 この日もいつもの様に、森に果物を集めに村を出ていた。
 和気藹々と満面の笑みを浮かべながら他愛も無い話で盛り上がる。
 それが一番楽しかった。

 その時だった。


「……………………」

 森の奥の方で、村の者ではない者の声が聞こえた。
 当然村の人口はとても少ないので、その全員の声を何となく記憶しておくのは容易な事で、生まれも育ちも村のオーザックは、必然的に全員の声を記憶していた。
 そのオーザックの聞き覚えがないということは。
 考えられるのは、一つしかなかった。

「ルリア。今すぐ、持っている荷物を此処に捨てて、村へ帰れ。」
「えっ? 何で?」

 ルリアのその返答に、オーザックは少し困惑した。
 ルリアは、その声に気付いていなかったのだ。

「いいから。早く村へ戻れ。」
「だから何でってば?!」

 ルリアが、大きな声を出してしまった。
 ()()に聞こえてしまったか。
 その心配でオーザックは頭の中がいっぱいになり、何故なのかを簡単に説明すればいいものの、そこまで頭が回らなかった。
 それ程までに、ルリアの死を危惧していた。

「さっさと戻れ!! 邪魔なんだよ!!」

 大混乱の末、オーザックは、ルリアにそう言った。
 酷い話だ。行成帰れと言われて、何故と聞いても答えてくれず、邪魔だと言われる始末。
 オーザックは、頭が真っ白だった。

 ルリアは、その言葉に衝撃を受け、一筋の涙を流しながら、その場を去った。
 オーザックは、ルリアが去ろうとした事を確認した後、奴等の対処を熟考した。

 その時。


 シュンッ


 オーザックの後ろで、何かが空を空を斬る音が聞こえた。
 咄嗟に後ろを向くと、そこには、飛んできたナイフで脇腹が裂けて悶絶するルリアがいた。
 ルリアは、叫ぶ余裕もなく、只々目を真っ赤に染めて悶絶している。
 汗が異常な程流れ、裂けた脇腹からは、大量の血が流れ出ていた。
 急所は外れた様だが、激痛がある事に変わりは無い。

 さっきまで考えていた奴等の対処が消え、頭が真っ白になった。
 そして、リリが殺された時の記憶がフラッシュバックした。
 オーザックは、悶絶するルリアの手を握ることしかできなかった。
 それ以外、何も考えられなかった。


 その時。

 グサッ

 背後からとつぜん、奴等がやってきて、長い槍で、ルリアの心臓を一突きした。
 ルリアの動きは止まり、微動すらしなくなった。
 死んだ。

 オーザックは、衝撃のあまり、只々呆然と座り尽くした。
 奴等は、ルリアの刺さったその槍を、刺さったまま振り回し、まるで狩ってきた猪を肩にかける様に、ルリアを肩にかけた。
 奴等は、ルリアを獣と同類に扱った。

 それを見た瞬間、オーザックの中で、何かが吹っ切れた。

 何も考えない。

 何も感じない。

 持っていた、ジュルカに貰った剣を抜刀し、足音をたてずに、静寂を纏いながら、ルリアを殺した(黄色人)の首に、刃をねじ込んだ。