放課後の部活。
 俺たちは空いている教室を見つけ、準備をして自分の作業に取り掛かっていた。
 今日もいい青空が広がっていた。
 まるで、心が浄化されていくような青々しい海も広がっていた。
 まだこの青空が残る時間に見て描く。
 これが俺の日課のようになっていた。
 俺は青や白、といった色を取り出して描いていく。
 その隣で楓は、何度もスケッチブックに描いた絵と色の構成図を見つめ、顎に指を当てて考えながら床に広げてある油絵具に手を伸ばしていた。


 1時間くらい経った時のこと。
 「お、いたいた!美凪こっち!」
 俺と楓は手を止めた。
 前のドアから顔を出したのは、
 ......ん?っげ!
 夜瀬さんだ......。
 お昼の時、楓に話したばかりの人が目の前にいるというなんとも言えない状況だ。
 「ふーん、こんな所でやってるんだ!どうも!」
 えっと......桜さんだ。
 一緒のクラスの人で、今日は当番だったから前で黒板を夜瀬さんと消していたからさすが分かった。
 2人が笑いながらこっちに近づいてきた。
 「夜瀬さんと桜さんどうしたの?なんか用事?」
 楓が2人に聞いた。
 「おお、鈴宮くん!昨日はいなかったのに今日はいるんだ!」
 「本当は絵橙と部活する予定だったんだけど、昨日は塾があったから急いで帰ったんだー」
 「そうだったんだ!昨日さ、白川くんの空の絵を見てたらちょうど白川くんと話せたから、今日もいるかなって探してたの!それで今日は美凪も誘ったの!素晴らしい絵を共有したくて!!」
 「絵を描くって集中するから邪魔かなって思ったんだけど大丈夫だった?ごめんね!」
 桜さんは申し訳なさそうな顔をして俺たちに言った。
 「大丈夫だよ!休憩も必要だし!な、絵橙」
 「おう」
 昨日のこともあって動揺したが、やはり絵を褒めてくれるのは照れ臭いが、実はいうと嬉しい。
 「楽空の言った通り、白川くんの青を基調とした空の絵素敵だね!鈴宮くんのは......え、すごい!!個性的な感じで美術館に飾ってありそう!」
 桜さんは、楓の絵をまじまじと見て褒めた。
 「まじで?!美術館って!!そんなこと言ってくれるなんて嬉しいわ!ありがとう!」
 楓は嬉しそうだった。

 そう、楓の絵は沢山の色を使って描いている。
 その証拠に絵の具が床に散らばっている。
 楓は見かけによらず、独特な感性を持っていて、俺も感化を受けるくらいの圧倒的な絵だ。
 楓の方を見ると、楽しそうに桜さんと話していた。
 楓はすぐ誰とでも打ち解ける。そう、コミュニケーション能力が高い。

 それに比べて俺は......、

 「今日は海と空の絵か!青色に水色、白色に、太陽を黄色っぽくしてるのか!なるほど......レとソとシ。ここら辺の音が似合いそうだね!」

 ......!びっくりした......!

 気づいたら夜瀬さんが隣に来て話しかけていた。
 俺の絵をどれだけ分析しているんだ?......って、音が似合うって何?
 どういうこと??

 すると桜さんが時計を見て、
 「あ!そろそろ合奏始まるから行くよ、楽空!」
 桜さん言われて、夜瀬さんも時計を見た。
 「ほんとだ!じゃあね白川くん!鈴宮くん!」
 「またねー頑張って!」
 「ありがとう!」「ありがとう!」

 楓がそう言うと、2人は同時に返事をして教室を出ていった。