「あ、あのねお姉ちゃん。一緒に映画でも観ない?」
夕食の片付けが終わってから私は奏お姉ちゃんに声を掛けた。奏お姉ちゃんはにっこりと笑みを浮かべた。
「いいよぉ。どんな映画なの?」
「ホラー映画よ」
私がそう言うと、奏お姉ちゃんは不思議そうな顔をしていた。
「ホラー……? 美優羽ちゃんホラーとか怖い系苦手なんじゃないの?」
「だ、大丈夫よ! 怖いのはもう克服したわっ」
私は強がってそう答えた。本当はいまだにホラーが苦手なんですけどね。そんなことを思っていると、奏お姉ちゃんは何か閃いた表情をしていた。
「そうだっ! 美優羽ちゃんが怖くないように、みんなで観ればいいんだ!」
そう言って階段を登って行った。5分後。悲しい表情で奏お姉ちゃんは降りてきた。
「唄お姉ちゃんも琴葉お姉ちゃんもダメだって……」
と言うことは二人で観ることになるのか。よしっ。私は心の中でガッツポーズをした。みんなで観たら奏お姉ちゃんの怖がる顔を独占出来ないもんね。これで良かった。
がっかりしている奏お姉ちゃんをよそに、私はDVDをプレイヤーの中に入れ、視聴の準備を始めた。さてこれからが楽しみだ。私はまだ見ぬ奏お姉ちゃんの表情にワクワクしていた。
2時間後。映画が終わった。結論から言おう。滅茶苦茶怖かった。店内では本当に怖いのかなんて思っていたが、そんなことはなかった。舐めたこと言ってすみませんでした。
特に怖かったのは霊から逃げるシーンだ。
霊を振り切って一安心しているとどアップで霊が出てきた。それも不協和音と一緒に。主人公が叫び声をあげていたが、私も一緒に叫び声をあげてしまった。
このシーンは今日寝る時にフラッシュバックしてきそうだ。そう考えるととても恐ろしい。
さて、問題の奏お姉ちゃんだが私が見る限り声をあげて怖がるどころか、表情があまり変わらなかった。今も平然とした表情だ。
「怖かったねぇ」
おっとりとした表情で奏お姉ちゃんは言う。
本当に怖かったのか? どう見てもそうは感じない。怖がるお姉ちゃんを見るはずだったのに……。この調子じゃ、一緒に添い寝してくれなんて言わないだろうなあ。
私の作戦は完全に失敗に終わった。私は落胆するしかなかった。
「どうしたの美優羽ちゃん。そんなに落ち込んだ表情して?」
奏お姉ちゃんは心配そうに見ている。
「気にしないで。こっちの都合だから」
「それならいいけど。あ、美優羽ちゃんとっても怖がってたけど、大丈夫だった?」
「大丈夫よ。私は怖いの克服したから……」
力なく私は答える。嘘です。怖いのなんて全く克服できてません。今も滅茶苦茶怖いです。そんなことを思っていると、
「一緒に寝たりとかしなくて大丈夫?」
奏お姉ちゃんはそう提案してきた。これはチャンスじゃないか? 望んだ形ではないが一緒に眠れるチャンスだ。一緒に寝るように言おう。私はそう考えた。
「べ、別に大丈夫よ! 私平気だから!」
ああ、また素直に言えない。私の口は反対の言葉を言ってしまった。私の言葉を受けて奏お姉ちゃんは少し頬を緩ませた。
「それなら大丈夫ね。じゃあ私、部屋に戻るね」
そう言って階段の方へと行った。折角のチャンスを不意にしてしまった。私は酷く落ち込むしかなかった。
DVDの片付けとネット小説を読んでいると12時を少し過ぎた時間になっていた。宿題は済ませているからもう寝よう。私はベッドへと向かった。
結局今日思いついた作戦では上手くいかなったなあ。上手くいくと思ってたんだけどなあ。また新しい作戦を考えないといけない。
次はどうしようか。いっそ二人用の寝袋でも買って、一緒に寝てみようなんて誘ってみるほうがいいのだろうか。まあそもそも二人用の寝袋なんて売ってるのかしら?
ちょっと気になったが調べるのは明日にしよう。今は寝ることに集中しよう。そう思い目を閉じる。
だが、浮かんでくるのは夢の景色ではなく今日観たホラー映画の映像だ。迫り来る霊。吹き出す血飛沫。血まみれになった変死体。そしてどアップで映る死神のような霊。
ダメだ。今日の映像がぐるぐるしている。怖くてとても眠れそうにない。私は小刻みベッドの中で震えた。
この調子だと一人じゃ絶対眠れない。やっぱり添い寝してもらおう。
唄姉は……却下だ。寝相が悪そうだし、いびきが酷いから余計に眠れそうにない。
琴姉もない。というか琴姉夜に寝ないから、添い寝できないし、部屋の明かりで目が冴えそう。
となると、奏お姉ちゃんしかいない。しかし、あんなこと言った手前今更一緒に寝てくださいって言い辛い。
さっき言えなかったのに、今言えるとは到底思えない。それにもしかしたらもう寝てるかもしれない。
けど、このまま一人で怖さに震えて眠らずに過ごすのは流石にダメだ。自分から言うのは恥ずかしいが、言うしかない。頑張るんだ美優羽。私は自分を奮い立たせた。
そうと決まれば奏お姉ちゃんの部屋に行こう。私はベッドを飛び出しお姉ちゃんの部屋に向かった。
向かう途中も映画の幽霊が出てきたらと思い、怖くて震えたがなんとか奏お姉ちゃんの部屋に辿り着いた。
夕食の片付けが終わってから私は奏お姉ちゃんに声を掛けた。奏お姉ちゃんはにっこりと笑みを浮かべた。
「いいよぉ。どんな映画なの?」
「ホラー映画よ」
私がそう言うと、奏お姉ちゃんは不思議そうな顔をしていた。
「ホラー……? 美優羽ちゃんホラーとか怖い系苦手なんじゃないの?」
「だ、大丈夫よ! 怖いのはもう克服したわっ」
私は強がってそう答えた。本当はいまだにホラーが苦手なんですけどね。そんなことを思っていると、奏お姉ちゃんは何か閃いた表情をしていた。
「そうだっ! 美優羽ちゃんが怖くないように、みんなで観ればいいんだ!」
そう言って階段を登って行った。5分後。悲しい表情で奏お姉ちゃんは降りてきた。
「唄お姉ちゃんも琴葉お姉ちゃんもダメだって……」
と言うことは二人で観ることになるのか。よしっ。私は心の中でガッツポーズをした。みんなで観たら奏お姉ちゃんの怖がる顔を独占出来ないもんね。これで良かった。
がっかりしている奏お姉ちゃんをよそに、私はDVDをプレイヤーの中に入れ、視聴の準備を始めた。さてこれからが楽しみだ。私はまだ見ぬ奏お姉ちゃんの表情にワクワクしていた。
2時間後。映画が終わった。結論から言おう。滅茶苦茶怖かった。店内では本当に怖いのかなんて思っていたが、そんなことはなかった。舐めたこと言ってすみませんでした。
特に怖かったのは霊から逃げるシーンだ。
霊を振り切って一安心しているとどアップで霊が出てきた。それも不協和音と一緒に。主人公が叫び声をあげていたが、私も一緒に叫び声をあげてしまった。
このシーンは今日寝る時にフラッシュバックしてきそうだ。そう考えるととても恐ろしい。
さて、問題の奏お姉ちゃんだが私が見る限り声をあげて怖がるどころか、表情があまり変わらなかった。今も平然とした表情だ。
「怖かったねぇ」
おっとりとした表情で奏お姉ちゃんは言う。
本当に怖かったのか? どう見てもそうは感じない。怖がるお姉ちゃんを見るはずだったのに……。この調子じゃ、一緒に添い寝してくれなんて言わないだろうなあ。
私の作戦は完全に失敗に終わった。私は落胆するしかなかった。
「どうしたの美優羽ちゃん。そんなに落ち込んだ表情して?」
奏お姉ちゃんは心配そうに見ている。
「気にしないで。こっちの都合だから」
「それならいいけど。あ、美優羽ちゃんとっても怖がってたけど、大丈夫だった?」
「大丈夫よ。私は怖いの克服したから……」
力なく私は答える。嘘です。怖いのなんて全く克服できてません。今も滅茶苦茶怖いです。そんなことを思っていると、
「一緒に寝たりとかしなくて大丈夫?」
奏お姉ちゃんはそう提案してきた。これはチャンスじゃないか? 望んだ形ではないが一緒に眠れるチャンスだ。一緒に寝るように言おう。私はそう考えた。
「べ、別に大丈夫よ! 私平気だから!」
ああ、また素直に言えない。私の口は反対の言葉を言ってしまった。私の言葉を受けて奏お姉ちゃんは少し頬を緩ませた。
「それなら大丈夫ね。じゃあ私、部屋に戻るね」
そう言って階段の方へと行った。折角のチャンスを不意にしてしまった。私は酷く落ち込むしかなかった。
DVDの片付けとネット小説を読んでいると12時を少し過ぎた時間になっていた。宿題は済ませているからもう寝よう。私はベッドへと向かった。
結局今日思いついた作戦では上手くいかなったなあ。上手くいくと思ってたんだけどなあ。また新しい作戦を考えないといけない。
次はどうしようか。いっそ二人用の寝袋でも買って、一緒に寝てみようなんて誘ってみるほうがいいのだろうか。まあそもそも二人用の寝袋なんて売ってるのかしら?
ちょっと気になったが調べるのは明日にしよう。今は寝ることに集中しよう。そう思い目を閉じる。
だが、浮かんでくるのは夢の景色ではなく今日観たホラー映画の映像だ。迫り来る霊。吹き出す血飛沫。血まみれになった変死体。そしてどアップで映る死神のような霊。
ダメだ。今日の映像がぐるぐるしている。怖くてとても眠れそうにない。私は小刻みベッドの中で震えた。
この調子だと一人じゃ絶対眠れない。やっぱり添い寝してもらおう。
唄姉は……却下だ。寝相が悪そうだし、いびきが酷いから余計に眠れそうにない。
琴姉もない。というか琴姉夜に寝ないから、添い寝できないし、部屋の明かりで目が冴えそう。
となると、奏お姉ちゃんしかいない。しかし、あんなこと言った手前今更一緒に寝てくださいって言い辛い。
さっき言えなかったのに、今言えるとは到底思えない。それにもしかしたらもう寝てるかもしれない。
けど、このまま一人で怖さに震えて眠らずに過ごすのは流石にダメだ。自分から言うのは恥ずかしいが、言うしかない。頑張るんだ美優羽。私は自分を奮い立たせた。
そうと決まれば奏お姉ちゃんの部屋に行こう。私はベッドを飛び出しお姉ちゃんの部屋に向かった。
向かう途中も映画の幽霊が出てきたらと思い、怖くて震えたがなんとか奏お姉ちゃんの部屋に辿り着いた。