翌日の放課後。一人で帰っていた家路に楓が加わっていた。

「それで結局主人公はその友人の告白を断ったのよ。けど、それでも友人として付き合うようにするっていう私の予想通りだったけど、いい話だったわ」

「そうですか。いい話だったんですね」

 私が昨日読み終えた小説の話を、楓は笑顔で聞いてくれた。

「楓は何か小説とか読まないの?」

「そうですねえ……、こう見えてあまり小説とか読まないんですよね。いつも料理のレシピとか料理の歴史、食文化に関する本ばかり読んでいるので」

「意外だわ。料理本が好きなのは前に聞いてたから納得だけど、小説読まないのね。私のでよければ何冊か貸すけど読んでみる?」

「そうですね。たまには読むのもアリだと思うので、借りてみたいと思います」

 そんなことを話していると、家の前についてしまった。

「そうだ。折角家に着いたんだから、その本今から取ってくるよ」

「えっ、いいんですか。ありがとうございます」

 楓はぺこりとお辞儀をした。

「それじゃあ取ってくるから待っててね」

 私は玄関へと入り本を取りに行った。

 この事件ある意味楓が犯人で良かったと思う。もしも変なおじさんとかだったらこんな解決はしてないし、もっと大変なことになってたと思う。

 それに、楓と一緒に帰ることも出来なかっただろうしね。私は内心でそう思った。

 探していた本が見つかり、部屋から再び玄関に戻る。外では楓がピシッとした姿で私の事を待っていてくれた。

「はい、お待たせ。一応2冊ね。あんまり渡しすぎても読めないだろうし。読み終わったらでいいから返してくれると助かるかな」

「わかりました」

 楓は軽くお辞儀をする。

「それじゃあ、またね。楓」

 私がそう言って振り返ろうとした時。

「あ、あの美優羽さん!」

 楓が少し大きい声で私を呼ぶ。

「どうしたの楓」

「こ、こ今度、美優羽さんの家に、ああ遊びに行ってもいいですか?」

 楓は少し真っ赤な顔をしていた。なんだ、そんなことか。こんなこと聞くくらいで緊張しなくてもいいのに。楓はかわいいなあ。私は微笑ましくなった。

「いいわよ。その時は連絡ちょうだい」

「わ、わかりました! 私の家も、いつでもいいので来てください! それじゃあ!」

 そう言い残し、楓は駆け足で帰っていった。

 何度も言うが事件がこんな感じでスッキリとした終わり方ができて良かった。私の心は晴れ晴れとしていた。