その瞬間にドキドキと心臓が反応した。見慣れない景色、普段からしない行動。衝動的とはいえ、いけないことをしてるのだからソワソワと落ち着かなかった。


こんな真夜中に家を抜け出すなんで私はいったい何をしたいんだろう。自分でもよく分からない行動に戸惑うばかり。だけどどこか遠くへ行きたくて、1人になりたかったのは事実。


ここまで来てうちに引き返すなんて選択肢は私の中になかった。


電車が止まり、ドアの前に立つ。


プシュウ……という空気の抜けたような音が目の前から聞こえ、ドアが開いた。ムワッとした夏特有の生暖かい空気が、私を包み込んだ。



「……あっつ」



電車を降りて、切符を駅員さんに渡し、外に出るとさらに蒸し暑く、思わずつぶやく。


私の独り言は夜の静かな空気に溶けて消えていった。


……さて。


これからどうしようかな……。パタパタと手で顔を仰ぎながら当たりを見渡す。