公園の出口までふたりで歩いて、一度立ち止まる。

春川ちゃん、家どっち?と先輩に聞かれ、左側を指す。

「お、一緒じゃん、ラッキー」と先輩が白い歯を見せた。



さりげなく車道側を歩きながら、黒山先輩はいろんなことを話してくれる。

年の離れた兄弟がかわいいこと。
次のテストがやばいこと。
進路のこと。

部活の話をしなかったのは、わたしを気遣ってのことだと分かった。



会話が途切れたタイミングがあった。

わたしは、すうっと息を吸って、腹を決める。


「……わたし、中学の時から相原先輩が好きだったんです――」


先輩はなにも言わず、ただわたしの話を聞いてくれた。わたしは淡々と話した。


話を聞くのが下手、と言っていたのはまるでうそのようで、なんでもっとはやく言わなかったんだろう、と後悔するくらい、とても話しやすかった。

話すうちになんだかだんだんむかついてきて、今までは思いもしなかった愚痴だって言った。

冬の体育館寒い。ボールがたくさん飛んできてこわい。
そんなどうでもいいようなことまで話した。


「少しくらい覚えていてほしかったです」


気がついたら、ぽろり。口にしていた。

そして、またぽろりとひっこんでいた涙まで顔を出す。

行動しなかったわたしが悪いのだから、思っても言うつもりはなかったのに。



ずっと黙っていた黒山先輩が、口を開く。


「……春川ちゃんは、明日からもう来ねーの?」

これはきっと、相原先輩を諦めるのか? という意味での問いだ。


「……はい。今日で、終わりにしようかなって。明日からは、また、新しい恋でも探します」

笑って言った。もちろん本心では泣きそうだった。

黒山先輩にも自分にも、わたしはウソをついたのだ。

「……そっか」