しばらく、無言の時間が流れた。
少しして、そろそろ帰ろっか、と先輩が切り出した。
わたしはそれには返事をしないで、「あの、黒山先輩」と口を開く。
「なんで聞かないんですか」
泣いてた理由。
黒山先輩は一瞬不思議そうな顔をした後、あぁ、とうなずいて、「だって」と続ける。
「俺、話聞くの下手だから。なぐさめとかできないし」
「そう……なんですか」
真夜中に公園で後輩が泣いている、という状況に居合わせて、そのことになにも触れないとは思わなかった。
いつか聞かれるな、と思って話す準備もしていた。
だけど黒山先輩は聞かなかった。
「それに、無理に話せなんて言いたくないしな」
「黒山先輩って、優しいです」
「はは、だろ」
相原先輩は覚えていなかったけれど、黒山先輩はわたしを見ていた。ちゃんとわたしを覚えていた。