この日も名無しはラロとともに猟に出た。今回はリックからやり方を聞いた罠猟だ。
「今日はお前の出番はないかもな」
「わぉん!」
返事だけは元気なラロを見て、名無しは本当に分かってるのか? と思った。ラロは黒い目で真っ直ぐ名無しを見つめて、尻尾を振っている。
「まずは昨日仕掛けたここ……おお、かかってる」
名無しの仕掛けた罠にウサギが一匹かかっていた。名無しはそのウサギの喉元をかっ切ると、次に仕掛けた罠の元に向かった。
「わんわん!」
「こら、ラロ。狩りの最中は無駄に吠えるな」
懲りないラロをしかりながらもう一つを確認しに行くと、そこにもウサギがかかっていた。
「……」
結局名無しが仕掛けた罠を確認した所、全部で五匹のウサギが捕れた。簡単な話だ、名無しは罠を仕掛けすぎたのだ。
「しまったやり過ぎた」
それでも獲れた獲物は持って帰る事にした。村に帰ると、薪を運んでいたリックとたまたま鉢合わせた。
「ああ、リック。ウサギを貰ってくれないか」
「おっ……それ全部アルが獲ったのか?」
「ああ、教えて貰った罠を仕掛けたんだが数が多かったみたいだ」
「それにしたって素人がいきなりやってこんなにかかるかねぇ……あんたは本当に変な所だけ器用だな」
リックは半分笑いながら、ウサギを受け取ってくれた。
「で、どうするんだい。肉はともかく皮を売りに行くのならまた荷馬車を貸すぞ」
「ああ、じゃあ借りようか」
初の獲物の鹿はなんとか自分でなめしてラロの寝床になっているが、なかなか大変だった上に出来はイマイチだった。これ以上必要もないので町に売りに行った方がいいだろう。
「わぁ、パパこんなに獲れたの?」
「やはり多いな」
「一匹教会に持って行けばええ」
「ああ。そうだクロエ、皮を売りにまた町に行くけど着いてくるか?」
「ほんと! うん!」
名無しはウサギの解体をヨハンに任せて、ウサギを一匹持って教会に向かう事にした。
「パパ、クロエも行く」
「ああ」
「お墓参りもしなきゃね。この時期はすぐ木の葉がたまるから」
「そうか」
クロエを連れて教会へと赴いた名無しはそのドアを叩いた。しばらくして扉を開けたのはエミリアだった。
「はーい……あらアル」
「これ」
「ひゃっ……ああ、ウサギですか」
「沢山獲れたんで……スープの具にでもしてくれ」
「まぁありがとうございます」
エミリアは少し怯えながらウサギを受け取った。名無しはそれを見て肉にしてから持ってくればよかったかもしれないと思った。
そこで名無しはふいにエミリアに聞きたかった事を思い出した。
「どうしました?」
「いや……なんというか……」
「悩みを聞くのは尼僧の仕事ですよ、遠慮無くどうぞ」
「……その……うまく言えないが……狩りで獲物を捕るのは、あんたなんにも言わないんだな」
「……ああ。この命は無駄なく頂くものですから。頂いた命は私達の中で生きていくのですよ」
エミリアはそう言って優しく微笑んだ。
「この間、クロエちゃんと麦の話をしたでしょう? このウサギも同じです」
「……そうか」
「ねぇねぇ、エミリアさん。このウサギの皮を売りにクロエ町まで行くの」
クロエは自慢げにエミリアに言った。クロエにとっては近くの町が一番の遠出だ。
「まぁ、良かったわね」
「うん。じゃああたしお墓のお掃除してくるから!」
そう言ってクロエは墓地に向かって走り出した。
「……そうだ。何か買い物があるなら言ってくれ」
名無しはかつてリックが彼にそう聞いて来たのを思い出して、同じ様にエミリアに聞いた。
「あら……それじゃ私も行こうかしら」
「あんたも?」
「ええ、辻に立って祝福を与えようかと……」
「祝福?」
聞き慣れない言葉に名無しは首を傾げた。
「ええ、お祈りをして施しを募るのです。司祭は旅の費用は出してくれるというのですが、そのまま甘える訳にも……と思ってまして」
「そうか、なら一緒に行こう」
名無しはエミリアとそう約束をして、クロエのいる墓地へと向かった。
「パパ! えーっと……」
「パパとママだな」
「そう。おひげのパパとママのお墓、綺麗になったよ」
「ああ……」
クロエと名無しは墓の前に跪いた。
「パパ、ママ……クロエは元気です。あのね、犬を飼い始めたの。いたずらばっかするけど良い子だよ」
「……」
「パパはなにかないの?」
「え? ……ああ……ここに来てから驚く事が多いが……クロエはよく働くし、爺さんはまだまだ元気だ……こんなんでいいか?」
「うん!」
名無しとクロエは墓参りを住ませると、手を繋いで夕暮れの道を歩いていった。
「今日はお前の出番はないかもな」
「わぉん!」
返事だけは元気なラロを見て、名無しは本当に分かってるのか? と思った。ラロは黒い目で真っ直ぐ名無しを見つめて、尻尾を振っている。
「まずは昨日仕掛けたここ……おお、かかってる」
名無しの仕掛けた罠にウサギが一匹かかっていた。名無しはそのウサギの喉元をかっ切ると、次に仕掛けた罠の元に向かった。
「わんわん!」
「こら、ラロ。狩りの最中は無駄に吠えるな」
懲りないラロをしかりながらもう一つを確認しに行くと、そこにもウサギがかかっていた。
「……」
結局名無しが仕掛けた罠を確認した所、全部で五匹のウサギが捕れた。簡単な話だ、名無しは罠を仕掛けすぎたのだ。
「しまったやり過ぎた」
それでも獲れた獲物は持って帰る事にした。村に帰ると、薪を運んでいたリックとたまたま鉢合わせた。
「ああ、リック。ウサギを貰ってくれないか」
「おっ……それ全部アルが獲ったのか?」
「ああ、教えて貰った罠を仕掛けたんだが数が多かったみたいだ」
「それにしたって素人がいきなりやってこんなにかかるかねぇ……あんたは本当に変な所だけ器用だな」
リックは半分笑いながら、ウサギを受け取ってくれた。
「で、どうするんだい。肉はともかく皮を売りに行くのならまた荷馬車を貸すぞ」
「ああ、じゃあ借りようか」
初の獲物の鹿はなんとか自分でなめしてラロの寝床になっているが、なかなか大変だった上に出来はイマイチだった。これ以上必要もないので町に売りに行った方がいいだろう。
「わぁ、パパこんなに獲れたの?」
「やはり多いな」
「一匹教会に持って行けばええ」
「ああ。そうだクロエ、皮を売りにまた町に行くけど着いてくるか?」
「ほんと! うん!」
名無しはウサギの解体をヨハンに任せて、ウサギを一匹持って教会に向かう事にした。
「パパ、クロエも行く」
「ああ」
「お墓参りもしなきゃね。この時期はすぐ木の葉がたまるから」
「そうか」
クロエを連れて教会へと赴いた名無しはそのドアを叩いた。しばらくして扉を開けたのはエミリアだった。
「はーい……あらアル」
「これ」
「ひゃっ……ああ、ウサギですか」
「沢山獲れたんで……スープの具にでもしてくれ」
「まぁありがとうございます」
エミリアは少し怯えながらウサギを受け取った。名無しはそれを見て肉にしてから持ってくればよかったかもしれないと思った。
そこで名無しはふいにエミリアに聞きたかった事を思い出した。
「どうしました?」
「いや……なんというか……」
「悩みを聞くのは尼僧の仕事ですよ、遠慮無くどうぞ」
「……その……うまく言えないが……狩りで獲物を捕るのは、あんたなんにも言わないんだな」
「……ああ。この命は無駄なく頂くものですから。頂いた命は私達の中で生きていくのですよ」
エミリアはそう言って優しく微笑んだ。
「この間、クロエちゃんと麦の話をしたでしょう? このウサギも同じです」
「……そうか」
「ねぇねぇ、エミリアさん。このウサギの皮を売りにクロエ町まで行くの」
クロエは自慢げにエミリアに言った。クロエにとっては近くの町が一番の遠出だ。
「まぁ、良かったわね」
「うん。じゃああたしお墓のお掃除してくるから!」
そう言ってクロエは墓地に向かって走り出した。
「……そうだ。何か買い物があるなら言ってくれ」
名無しはかつてリックが彼にそう聞いて来たのを思い出して、同じ様にエミリアに聞いた。
「あら……それじゃ私も行こうかしら」
「あんたも?」
「ええ、辻に立って祝福を与えようかと……」
「祝福?」
聞き慣れない言葉に名無しは首を傾げた。
「ええ、お祈りをして施しを募るのです。司祭は旅の費用は出してくれるというのですが、そのまま甘える訳にも……と思ってまして」
「そうか、なら一緒に行こう」
名無しはエミリアとそう約束をして、クロエのいる墓地へと向かった。
「パパ! えーっと……」
「パパとママだな」
「そう。おひげのパパとママのお墓、綺麗になったよ」
「ああ……」
クロエと名無しは墓の前に跪いた。
「パパ、ママ……クロエは元気です。あのね、犬を飼い始めたの。いたずらばっかするけど良い子だよ」
「……」
「パパはなにかないの?」
「え? ……ああ……ここに来てから驚く事が多いが……クロエはよく働くし、爺さんはまだまだ元気だ……こんなんでいいか?」
「うん!」
名無しとクロエは墓参りを住ませると、手を繋いで夕暮れの道を歩いていった。