三年が経った。
 俺は四歳となり、ダイアは三歳となる。
 俺はもう問題なく話せるようになり、ダイアも話せるが未だ拙い。
 ちなみにダイアは弟ではなく妹だった。
 滅茶苦茶可愛い。

「にーに…………」

 そう言って抱きついて来てくれるのだ。
 俺の服に顔を(うず)めてエヘヘと笑う姿はもう。
 そういえば前世でも妹キャラが大好きなことを思い出した。
 だからこそ、この可愛い妹を溺愛してしまうのだ。


 ◆


 そんな事は置いておいて。
 この三年で、この世界とこの町の事が少しは分かった。
 先ずこの世界だが。
 ルイア曰く、ルイアの母、通称創造主が作った世界である。
 そしてこの世界は、一つの大陸のみで成立しているのだ。
 周りは海に囲まれ、その外には何も無いのだと。
 つまり本当に、この世界にはこの大陸のみしか存在しない。
 まるで箱庭だが…………
 流石に創造主であれ星系規模の世界を創造することは出来ない訳だ。
 そしてこの世界に存在する国家や生態系だが。
 生態系に関しては地球とそっくりである。
 虫も居れば、猫や犬の様な生物もいる。
 見た目も地球で見た様なものばかり。
 その姿をした別物の可能性もあるが、姿は地球のものと瓜二つ。
 その上その生物の性質すら地球のものと大差無かった。

 そして本題。
 この世界の国家についてだが。
 先ず言うべきは、この世界には二大国家のみしか存在しないと言うことだ。
 周辺諸国や小国が在る訳でもなく。
 傀儡国家や植民地なんか概念すら存在しない。
 本当に二つの国家のみが、大陸を大きく二分していた。


 ◇
 

 先ず西にあるのが、我らがガイムーン王国である。
 王都ガルシスを中心に展開されている国家。
 日本の様な中央集権では無く、地方分権を採択している。
 その上それぞれの地方の主。つまり領主の有する権威は大きく、地方というよりは州に近いかもしれない。
 詳しい統治方等の説明は省くが、歴史の長いこの国。領地も莫大で地方分権でありながらこれまでに数える程しか大きな問題は起こっていない。
 それは(ひとえ)に国王、フィレーネ=ガイムーンのカリスマ性にあるのだ。
 フィレーネ=ガイムーンとはこの国、ガイムーン王国の現国王である。
 女性なので王妃かと思われるがそうでは無い。
 どうやらこの世界にそう言った男女差別は皆目存在せず、男が国王となる代もあれば、女が国王となる代もあるのである。
 それはただ単に国王となり得る王族の夫婦の内、何方が国王たり得るかによって決定される。
 統治能力、カリスマ性、政治に関する教養、その他教養……等々。
 その評価項目は多岐に渡り、厳格な選挙の下、決定される。
 フィレーネ陛下には王配が居る。
 名を、バルオット=ガイムーンと言う。
 温厚な人で、フィレーネ陛下とバルオット殿下はおしどり夫婦として王都でも有名だそう。
 余談だが、国王秘書のパティ=グロウムとフィレーネ陛下は同年齢で、幼馴染だそうだ。
 今でも仲は良く、二人きりの時は敬語を使わず常体で語らっているらしい。
 何とも微笑ましく思う。


 ◇


 そしてその東に位置する二つ目の国家。
 ライア=ヴァルヘルム皇国。
 古来より幾度となくガイムーン王国と戦争を続けている国であり、しかし皇国がこれまで戦勝した事は無いとされている。
 なのに幾度も宣戦する皇国の王国内での評価は、自国の兵を無駄死にさせる無能国家と散々である。
 しかし兵数を増加させたという事例は、今行っている戦争準備が初めてであるとされているので、しかしそれでも尚散々舐めている奴は居るもの。
 なのでそれに対して少なからず危機感を抱いているコルの思考は妥当だと言える。
 だが、舐めている人々も、そう思うのも仕方が無い。

 ――何せ皇国の内情は、王国民には何一つ公表されていないのだから。

 偵察に行った王国兵は、戻って来ない。
 戦争が勃発しても、国境付近で終結する為、皇国人が王国内に入ることは無い。
 おまけに皇国から王国へ流れて来る皇国人は、これまで一人もいないのだ。
 つまり王国には、皇国内の諸々を知る手段が無いのだ。
 よって皇国の内情を一切知らないからこそ、ただの弱小国だと罵るのだ。
 実に浅はかだが、それが人というものなのだろう。
 おっと脱線してしまったが。
 つまり皇国については()()()()()()
 情勢から支配体系から、何も解らない。
 だからこそ不気味だ、とコルは言っていた。
 不可解であり、不気味であり。
 国主が一体どんな人なのか。それだけで大体の情勢や宣戦目的は察せられるが、国主が不明、若しくは存在しないか。つまりさっぱりなのだ。
 いつに間にか欺瞞されていたりすれば。
 そう考えるだけで悪感が迸る。


 ◇

 
 ちなみに両国共、領土の広さは大体同じ位らしい。
 一体何故なのかは、誰も知らなければ、言及する馬鹿も居ない。
 だが俺にはなんとなく解る。
 何故かは解らないが、根拠の無い予想が煮えたぎる。
 恐らくだが、両国は――――