「折原さん、部活一緒に行かない!?」

「「………。」」

気合いが入り過ぎて廊下にキーンと声が響いた。

「誘われなくても行くわよ」

昨日部活へ行かなかったから、どうやらわざわざ探して誘いに来てくれたらしい。

でも今日は行くつもりだった、文化祭に向けてまだすることはあって途中で仕事放り投げていくのはよくないから。

「じゃあね、しなの」

「ばいばい!部活がんばって、藍もともりんも!」

「しなのちゃんばいばいっ」

しなのに手を振る望月さんの隣をスルッと抜けて部室までの道のりを歩く、ここからだと1回下まで下りなきゃいけなくて結構遠い。

スタスタと歩く私の後ろを望月さんが小走りで追いかけて来る。

きっと小さな望月さんは一歩の距離も狭いんだ。あとスクールバッグをごそごそして何か探してるみたい。

階段を降りながらだからなかなか出て来ないらしく、降りた直後やっと取り出した。

「折原さん、これ!」

「……。」

「楽譜…なんだけど」

“…これは私の仕事だから、望月さんは練習してくれていいから”

“ほっといてっ!!”

バラバラにしたまま置いてきてしまった楽譜だった。まとめてクリアファイルに入れてくれた楽譜を、はいっと差し出された。

「ごめんね、せっかく丁寧にリスト作ってくれたのに…」

文化祭で披露する曲をいくつか抜粋した。みんなが知ってる曲で、弾きやすそうで、それでいて飽きない曲を選んで楽譜を人数分コピーして歌詞も付けて曲ごとにホッチキスで留めて…そのためには何度も聞いちゃったりして。

「こんなにしてくれたのに勝手に曲決めちゃったら嫌だったよね、ごめんね」

「別にいいけど、これも私の仕事だったから」

…ううん、そうじゃなかったかも。

ただ好きでやってただけで誰に頼まれたでもないし、これが必要だったのかもよくわからない。

私の方こそ勝手な正義感で押し付けてた。