「…いつもそんなこと言わなくても一緒に帰るじゃん、帰るとこ一緒だし」

「あはっ、だよね。なんとなく言ってみたかったの!…今日は」

「?」

藍が背を向けて歩き出したから、大きく一歩を踏み出して同じように歩き出した。

隣に並んで玄関から出た、校門をくぐって同じ道を歩いて帰る。

しっとりした風に変わった10月はすっかり秋めいて、そよそよと気持ちがよかった。

「奏…」

「ん?」

「昨日はごめんね、あの…っ」

「いいよ、全然」

申し訳なさそうな顔をする藍に笑って返した。

「俺の方こそごめん、藍がいろいろやってくれてたのに…無駄にしたみたいで」

「ううん、それはいいの!あれは私が少しでも役立てばいいなって思ってやっただけだから」

「うん、ありがとう」

「…っ」

何でもやってくれるから、それが普通になちゃって気付けなかった。


そこに藍がいるのがあたりまえだったから。


「藍に頼り過ぎちゃってたよね、これからは気を付けるね」

「そんなことないよ!」

「俺先輩なんだし普通にやんなきゃだっだよねごめん、しかも部長だしもっと藍の負担減らせるように」

「負担だなんて…っ」

急に左側が寂しくなった。

風がふわっと当たり始め、足を止めた。

藍が立ち止まったから。