今日は部活に顔を出さずそのままバイトへ行こうと思った。

そんな日は駿二に部室の鍵を頼んで、教室を出たら玄関の方へ向かう。

このまんまバ先行ったらちょっと早いかな、でも1回帰るのもなんか…制服着替えたとこでどうせまたバイトで着替えなきゃいけないし、でもまだ時間あるし、困る。

まぁ1回帰るか、そしたらスクバ置いて行けるもんね。

ふぁっとあくびをしながら、下駄箱でスニーカーに履き替えた。今日はお客さん少ないといいなーとかって思いながら、玄関を出ようとした時だった。

「奏!」

藍に声をかけられた。

今日初めて名前を呼ばれた。

「…何してんの?」

顔を見たのも、今日は初めてだ。

「奏待ってたの」

「俺を?」

「うん」

「え、今日部活はー…」

なんて聞く必要なかったけど、あたりまえになってたからつい聞いてしまった。

「私部員じゃないからね」

「そうだったわ」

ただ藍は付き合ってくれていただけで、部費のこととか、練習についてとか、率先して引き受けてくれていただけだった。部活動に縛られる生活を送らなくてよくて、行かないのがあたりまえなんだ。

「ずるいでしょ?こんな時だけ部員じゃないって言うの」

「そんなことないよ、だって事実じゃん」

「散々部室に出入りしてるのに?」

「勉強したいって日以外来てることがすごいよ」

真面目な藍だから、勉強に集中したくて部活に入っていないのかもしれない。その中で手伝ってくれてるんだ。

「勉強したいから部活に行けないってセリフが言えるのがまずすごい」

「奏も少しは言えたらいいと思うよ」

でもじゃあどうして、そこまでしてくれるんだろう。

部活にだって入ってないのに、どうして…

「奏、一緒に帰らない?」

部活に入らないの?