「なぁ奏、あの歌詞って灯璃ちゃんが書いたんだよな?」

「……………………バレ」

「長ぇよ!バレてんだよ!」

灯璃が誰にも言わないでほしいって言うからChatGPTで作ったってことにしたんだけど、さすがに無理があったか。 

「よくわかったね」

「わかるわ、あんなの奏に書けるわけないしChatGPTにしては思想強すぎんだよ」

「思想って」

やっとお弁当の蓋を開けた。
その間に駿二は2個目のカレーパンを食べていた。

え、待って今俺には書けないって言った?失敬だなそれは。

「じゃあさ…始業式のも、灯璃ちゃんが書いたんだよな?」

大きめにカットされただし巻き卵を箸で掴んだ。一口では食べきれなくてパクッと半分かじった。

「そうだけど」

「ふーん…」

これも灯璃に言わないでって言われたけど、もう今更付ける嘘がない。ごめん、灯璃。

「俺さ、最初あれは藍ちゃんが書いたんだと思ったんだよね」

2個目のカレーパンを半分かじったところで駿二が食べるのをやめた。

「藍ちゃんに動画見せてもらったて初めて聞いた時、これはこの歌詞は藍ちゃんが書いたんだって思った」

かじりかけのカレーパンを見つめて、ひと呼吸置いて俺と視線を合わせた。

「それぐらい奏への気持ちがこもってたから」

もぐもぐと噛んでいただし巻きがゴクンと喉の方へと流れて行く。よく噛んだはずなのにどこか詰まる感じがして苦しかった。

「奏も思ってた?」

「…思ってないよ」

「思ってたっしょ絶対~!」

「思ってないって、普通にラブソングだっただけ!」

音楽に置いてラブソングはメジャーだ、誰だって恋愛はするから共感しやすいってこともあってそれだけでそんな風にうぬぼれたりするわけない。

「じゃあ…」

一度目を伏せた駿二がゆっくり視線を上げた。

「藍ちゃんの気持ちは知ってんでしょ?」

「…気持ち?」

「またまた~、とぼけちゃって!わかってんだろ?」

藍とは物心ついた時から一緒にいる。

両親がいなくなってからもずっと一緒にいてくれた。


俺にとっての藍は出来ることならこれからも一緒に…


「わからないし、知らないよ」

残り半分のだし巻きを口の中に入れた。もぐもぐと噛み始める。

「そんなことないだろ」

「あるよ」


知らないよ。

知りたくないよ。

知らないままでいられるなら。


「あ、今日奏バイトだっけ?」

「うん、だから部活は」

「おっけおっけ、休みな!」