「別にそれは気にしてなかったけどね、藍ちゃん」

「………。」

次の日の昼休み、駿二が購買で買って来たパンと共にうちのクラスへやって来た。

勝手に俺の前の席に座って豪快にカレーパンを食らう。そこは駿二の席じゃなくて岡山くんの席だ。

「せっかく自分が楽譜集めて来たのに使われなかった!みたいなことは言ってなかったよ」

あのまま帰ってしまった藍のフォローをしてくれてるんだと思う。家でもあんまり話せなかったし、今日だって先に学校行っちゃうし、いつも一緒に来てるのに。

「むしろまた奏の曲が聞けるって喜んでたから」

「……。」

ちゅーっとパックのりんごジュースを吸った。

いつもは飲まないけど、今日はどうしてか甘いものが欲しくて藍のおばさんが作ってくれたお弁当とりんごジュースがお昼ご飯だった。

「奏?聞いてる?」

「聞いてるよ、聞いてるけど…」

「何?」

勢いよく吸ったから一気にりんごジュースがなくなった。しまった、もう少し味わって飲めばよかった。

「…藍は軽音部じゃないのに、頼みすぎちゃったかなって」

ふぅって息が漏れた。

あたりまえみたいいになってたけど、藍の時間をもらってたんだ。

「まぁね、いっつも藍ちゃんがめんどうな仕事してくてたからね。俺らそれに甘えちゃってるとこはあった」

「だよなー、部費の計算とかしてくれてるもんなー」

「あれは本当ありがたいよな」

飲み終わったりんごジュースのパックを折りたたみながら、昨日のことを思い出した。

散らばった楽譜たちを。

「まぁでも部費の計算はともかく、好きでやってるように見えたけどな」

それなのに始業式では勝手に曲変えるし、文化祭も勝手に…


そうゆうのちゃんと藍に話しておくべきだった。

灯璃のことだってもっとちゃんと、軽音部に誘ったこと話しておけばよかった。