「謝ることじゃないよ、全然灯璃が謝ることじゃないし」

「でもっ、…嫌な思いさせちゃったかなって。あんまり話したくなかった、…よね?」

顔を上げた灯璃が一生懸命上を見た、俺の顔を見るために。

「話したくないわけじゃないよ、本当のことだし駿二だって先生だって知ってることだから…でも、どう思われるかなーとかは考えるけど」

「どうも思わないよ!」

「でもほら一緒に住んでるだけで婚約してるとまで思われてるし」

「そ、それは…!そんなつもりじゃっ」

「いいよ、わかってるから」

灯璃を困らせたくて今のはちょっと意地悪してしまった。

わかりやすく困惑した表情を見せた灯璃が可愛かったから。

「誰に何言われたか知らないけど、お世話にはなってるけど藍とはそんな関係じゃないし、そうゆうの言われるのあるあるだから気にしないでよ」

「でも…気にするよね。奏くんは嫌じゃないの?」

「俺は…」

カチッと時計の針が進んだ。

チャイムが鳴る、午後の授業開始のチャイムだ。

「灯璃がわかってくれるならそれでいいよ」

ニッと笑って見せた。

今度、灯璃はどんな顔するかなって思いながら。

頬を染めて恥ずかしそうに少しだけ俯いた。

それを見てまた笑ってしまった。

「ねぇ、チャイム鳴っちゃったね」

「あ、やば!次の授業なんだっけ!?」

「サボっちゃう?」

もう一度ギターを手に取った。

あ、でもさすがに授業サボってギター弾いてるはバレるかもしれないか。

「…奏くんがサボるなら、サボろうかな一緒に」

本当は歌い終わったら聞こうと思っていたことがあった。

でも、もう聞かなくてもいっか。

たぶんこれからは避けられない、かな。