部室の壁にかけてある時計を見ればあと5分で昼休みが終わる。

遠くから予鈴が聞こえた、ここはチャイムの音も聞こえにくい。そろそろここを出なきゃ午後の授業に間に合わないな。

咄嗟にパイプ椅子に置いたギターを持ってギタースタンドに戻した。

「…じゃあ、何で一緒に暮らしてるの?」

ふぅっと一呼吸入れる。

灯璃の方を見ながら。


「俺、両親いないんだ」


「え…」


別に誰かに話したのは初めてじゃない。 

駿二だってこのことは知ってる。

でも少し話すのに緊張したんだ、それはなんでだろう。


「小学校1年生の時ね、事故で…俺だけ助かったっていうか。それから藍の家で預かってもらってるっていうのかな。藍の家族とは昔から仲良くてよくて一緒に遊んでたから…」

もう10年前の話になる、今では藍の家に帰るのが俺の日常になるぐらいで。

「ごめん!!」

灯璃ががばっと頭を下げた。直角になるくらい、正確に勢いよく。

「何も知らないで私っ、変なこと言っちゃった!」

「…。」

「本当にごめんなさい…っ」

「…ふっ」

全然頭を起こしてこない灯璃があまりに必死だから、そんな姿がなんだか可愛くて…


笑ってしまったんだ。