いつの間にっていつの間でもなくて、夏休みからで。

急に仲良くなった…

急だったかな、あれって?

あの場所でギターを弾くたび、見かけてたからなぁ。
 

“ねぇねぇ!この曲って何て曲?誰が歌ってるの?”

俺がギターを弾く手を止めた瞬間、ぱぁっと開いた瞳で夜なのにキラキラ光ってるみたいな顔で。


“めっちゃいい曲だよね!私初めて聞いたんだけどこんな感動した曲初めて!これって歌詞はある?誰か歌って…”

あんなこと言われたの初めてだったからびっくりした。


“奏くんの曲、…歌いたい!”


俺の曲で歌いたいなんて物好きな人もいるんだなーって、でもおもしろいから聞いてみようかなって。



それが…俺の中の衝撃だった。



別に誰かに聞いてほしくて作ってたわけでもないし、ましてや歌ってほしいなんて考えたこともなかったのに…


俺も初めてだったよ、こんなに誰かの歌声で感動したのは。


ただの“ラ”が忘れられない“ラ”になった。


不思議だったんだ、1人で作っていた曲が灯璃のために作ったんじゃないかって思えるぐらい灯璃の声が浸透していたから。


だからもっと歌ってほしいと思った。


もっと聴かせてほしいと思った。



俺の曲で、灯璃の声を。



「奏にそんな子がいるなって俺はショックだよ」

ぷくーっとほっぺたを膨らませ、みょーんと口を尖らせる。わざとそんな顔を俺に見せた。

「なんで駿二がショックなの?」

「ショックだろ!教えてくれよ!!」

答えになってなくてよくわからなかった。駿二はたまにそうゆうとこあるからなぁ。

次は教えてあげた方がいいのかぁ、たぶんしないけど。

「藍ちゃんは知ってたの?」

駿二と合わせていた顔を、前を向くようにグラウンドの方に変えた。

「知らないよ」

「ふーん、そっか」