「あ、あれ藍ちゃんたちじゃね!?」

ここは3階のベランダ、グラウンド全体がよく見える。駿二に言われて振り返ると藍たちがバッドの入ったカゴをゴロゴロと引いていた。

今から体育かな、バッドってことは野球?ソフトボール??

「おーーーーーいっ!!!」

ブンブンと右に左に大きく駿二が手を振った。そんな振り付けがあるみたいに元気よくアピールして…るのに藍も灯璃も控え目に顔の隣で手を振るだけだった。それにはちょっと笑ってしまった。

「もっと振ってくれてもよくないか!?」

ふっ、ふっ、ふっ、ふって声が漏れる。グーにした手で口を隠した。

「おい奏!笑ってんなよ!!」

「笑うだろ、あんなの」

全然届いてないじゃないか、というか迷惑そうな顔してるようにも見える。遠くて顔なんかわかんないけど。

あんな愛想程度の振り返しとか。
だからマネして俺も愛想程度に振り返した。

「つーかあの2人って部活以外も一緒にいるんだな、なんか意外だった」

そーいえば藍と灯璃は同じクラスって言ってた。

教室だったら話してたりするのかな。今も一緒にいるし、あと…


灯璃の隣にもう1人女の子がいる。

あの子は誰なんだろう、もしかして…


「なぁ、奏と灯璃ちゃんっていつの間にそんなに仲良くなったの?」

さっきまでブンブンと振っていた手を下げて、コンクリートの柵に寄りかかる俺の隣にひょこっと並んだ。

「学年も違うし、接点なくね?1年の頃から一緒にいる俺でさえ知らなかったんだけど」

「うーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…」

「んまでの空欄長すぎだろ」