「はい、出来たよ」

「ありがとう」

あっという間にくるんっと跳ねていた髪は元通りになった。

ふと藍の方を見れば、髪の毛もしゃんとして制服も乱れることなくしっかり着ていた。
もう学校へ行く準備万端だった、俺はまだパジャマなのに。

「…何?まだ何かあった?」

「今日は藍も部活来るんだよね?」

「行くよ。文化祭の曲も許可が出たし、真面目に部活やる期間始まったんでしょ」

「うん、そう…」

使ったタオルを洗面台の隣に置いてある洗濯機の中に入れた。

「どしたの?なんか気分落ちてない?」

気分が落ちてるってわけではないんだけど…

「ちょっと緊張しちゃうなって、あとなんか恥ずかしいし…俺の作った曲を藍に聞いてもらうのは」

「えー、なんで?何が恥ずかしいの?」

「恥ずかしいよ、だって藍は家族みたいなもんだもん」

どことなく恥ずかしい。今までひっそりやって来て、聞かせたことなかったから。

「もう1回聞いたのに?始業式の時聞いたよ?」

「あの時とはまた気分が違うんだよ、あれはやるつもりなかったのを急遽だったから」 

本番直前のステージに立つ前、ギリギリの変更だったこともあってか不思議と緊張はなくてワクワクしてた。

高まっていく気持ちに気分さえよくて、あれを“快感”って表現するのかなってぐらいに。

「あ、そうそう!あれって勝手に演奏する曲変えて怒られなかったの?」

「怒られた」

「あ、やっぱそうだよね。絶対何するでも許可いるのに、その許可取った意味ないもんね」

始業式の演奏も文化祭と同じで数ヶ月前から曲や機材使用の申請が必要だったのに、それを突然変更したらそら怒られるに決まってる。 

「でも盛り上がったからいいって許された」

「久野先生、寛大でよかったね」

「なんなら褒められた」

「じゃあ尚のことよかったじゃん、結果オーライだね!」