「奏、おはよ~」

「んはお~」

洗面台の前でシュコシュコと歯磨きをしている時に藍に話しかけられたから上手く声が出せなかった。

でもあいさつされたらあいさつで返したいからそこは仕方ない。

「今日から部活再開だよね」

コップに入れてあった水を口に含んでガラガラとすすぐ、この口の中が爽快感に溢れる瞬間っていいよね。

スッキリーって感じがすごく好きな瞬間。

「…うん、そうだよ」

だから時間差で藍に返事をすることになった。歯磨きしてる時に話しかけられたから。

「テスト終わったら文化祭モードだもんね」

「うん、これからいつもより忙しくなるね」

「駿二先輩も張り切ってたよね」

「それはもう…めちゃくちゃ」

ふふって藍が笑いながら、鏡の裏の収納棚からくしを取り出した。

こんなイベントごとがある時は週2日だった部活動が毎日になる。普段ゆったりした練習もこの時だけは力が入って…でも俺バイトあるんだよね。毎日は出られないなぁ。

「奏、寝ぐせ付いてるよ」

「これ全然直らないから諦めた」

くるんっと右に跳ねていかにも寝ぐせ感で、歯磨きの前に調整を試みたけど無理だった。強すぎる寝ぐせにさよならを告げたとこだった。