「俺だって同じ軽音部なのにさ、何も教えてくれないでさ…っ」

「いいよ、俺の曲で」

これまたけろっと奏くんが答えた。 
 
「文化祭、俺が作った曲で」

えーーーーっ、いいんだ!?

言っちゃいけないのかと思ってた私何!?

隠してると思ってたのに、そんなサラッと言われるとか。

全然読めない奏くんに私は惑わされてばっかりだ。

「でもその曲は嫌だな」

駿ちゃん先輩が持っていたスマホを手にした。
ボリュームを上げて、流れる奏くんのメロディーと私の声にふふって笑った。

「いや、どっちだよ!?今いいよって言ったじゃん!」

「うん、俺が作った曲をやるのはいいよ」

スマホに向けていた視線を変えて、顔を上げた。

「その代わり新曲がいい」

え、新きょ…っ

「新曲って何!?他にも曲あんの!?」

私が考える間なく駿ちゃん先輩が奏くんに突っかかるように体ごと近付いた。奏くんの両肩を持って大きく見開いた目で見てる。

「こっちはまだ完成ではないんだけど」

スッと駿ちゃん先輩の手を払ってスマホを返した。

「弾くから聞いてよ」

立てかけてあったギターを手に取った。  

「完成じゃないって半分しか出来てないとか?」

「ううん、曲の方は出来てる」
 
「は、じゃあ…何が出来てねぇの?」

出してきたパイプ椅子に座ってギターを構えた。  


パチッと私と目を合わせて、微笑んだ。 


“俺の曲の歌詞、灯璃に書いてほしい”

今のはきっと、そーゆう意味だ。

それだけはわかっちゃった。