焦って奏くんの方を見たら、奏くんに笑って返された。

それはどーゆう意味だったんだろう…

「まぁいいよ!俺が知らないのはっ、俺が休んだからで代わりに灯璃ちゃんが出てくれたことは感謝しかないから」

やっと演劇モードを終えた駿ちゃん先輩が立ち上がり一呼吸置いた。

はぁっと息を吐きながら一瞬視線を下に落としたかと思えば、すぐにずいっと詰め寄るように私を見た。

「でもなんで灯璃ちゃんは歌えたの?」

「………え、えっとっ」

それは毎夜路上ライブする奏くんのもとを通い詰めたからで…、とは言えるわけない。

「だって誰に聞いてもあの曲知らないって言うんだよ!藍ちゃんだってあんな歌詞の歌知らないって言ってて、それなのになんで灯璃ちゃんが知ってるのが謎なんだけど!」

あの歌詞は私が書いたやつだから、奏くんだってあの場で知ったんだもん…
それを今答えるのは、ちょっと恥ずかしい。

だって今目の前で歌ってる動画見せられてるから!

わーーーっ、思ってる以上にダサかった! 
いいと思いながら歌ってた自分ありえない!  

ここで動揺を見せたら駿ちゃん先輩にバレてしまうと思って、引きつりそうになる顔に力を入れてなるべく平然を保ちながら隣を見た。


そしたらやっぱり奏くんは笑ってて。

 
でも今度は部室に来てからずっと1人バタバタしている駿ちゃん先輩を見ていたずらに笑ってた。

そのまま私の顔を見て、同じように笑った。


それってどーゆう意味なの?

どっちなの?

言っちゃいけないの?


内緒にしてることを楽しんでるの…? 


なんて、都合いいように思っちゃうけど…