なーんて、私に言えるわけないんだけど。

おみやげにキーホルダーだって買えないんだからね、そんなこと全然無理だよ。

「…てか今日って部活あるでいいんだよね?」

しーんとしたままの部室が気になって、窓の外を見るのをやめて振り返った。誰も来る気配がなくて不安になる。

「ん、あれって…」

窓を開ける時に長机の上にスクールバッグを置いちゃったから死角になって気付かなかった。部室は空いてたし、やっぱり一度ここへ来てたんだ。

「これ奏くん家の鍵だ!」

ぽんつんと置いてあった鍵、付いていたキーホルダーに見覚えがあったから。

木で作られたひまわりの花の部分だけくり抜かれた、ところどころ傷のある年季の入ったキーホルダーはしっかり覚えてる。 

花びら削れてなくなるまで使ってるなんてよっぽど気に入ってるんだろうなーって…

明るいとこで見るとより傷が目立つな、あの時は暗かったからひまわりの形もう成してないなぐらいに思ってたけど金具の部分も変色しちゃってるし。

それほど長く使ってるんだ、これ。

「でも家の鍵置きっぱなしってどーなの?ダメじゃない?」

なんてゆーかのほほんってしたところがあるから、こーゆうの気にしないっていうか気付かないっていうか…また他の物と出て来ちゃってそのままとかって感じなんだろうね。

「しょーがないなぁ、預かって…」

鍵の部分を持ちながらひまわりを見ていた。

奏くんが来たら渡してあげっ


「あ、鍵!」


だけど、鍵を探していたのは奏くんじゃなかった。

「よかった、ここにあったんだ」

勢いよく開いたドアの向こう、私の持っている鍵を指差した。

「これ…、折原さんの?」

似たようなものはあるかもしれない、鍵だってキーホルダーだって。

「そうだけど」

でもあのキーホルダーはあの夜、私が拾ったキーホルダーにしか見えなくて。


奏くんが持ってたキーホルダーだった。


なのに、どうしてそれを折原さんが?


いくら幼馴染みでも、そんなの…