結局おみやげは買わなかった。

ガリガリ君は買えるんだけど、キーホルダーは…買うのに躊躇しちゃった。


折原さんは買ったのかな?
あのキーホルダー。

折原さんは誰のこと思って買ったのかな…  


課外研修が終わったらもうすぐ中間テストがある、中間テストが終われば文化祭でその話し合いはまだ途中だった。

今日の部活はその文化祭で歌う曲決め、何がいいかな~…

そんなこと考えながら階段を上った。
部室までの道のりは長いから、物事考える時間多くなっちゃって。

やっと着いた部室の前、何も聞こえて来なくて今日もまだ誰もいなさそうだった。

また1番に来ちゃったのかな、やっぱり張り切ってるみたいじゃっ

「あ、開いてる」

ドアに手をかけてみると鍵はかかっていなかった。じゃあ誰かいるんだ、と思ってドアを開けてみても誰もいなくて相変わらずもわっとした空気が不快だった。

先に窓だけ開けて待ってよ、そのうちみんな来るよね。

窓を開けて顔を出す、涼しい空気に触れたくて。

9月の後半になったところ、たまに涼しい日も出て来てずっと暑い日ばかりじゃなくなって来た。

…ここの窓を開けても見えるのは反対側の校舎なんだよね。グラウンドが見えるわけでも、自然な景色が見えるわけでもないから、全然アンニュイな気分にもならないな。

「………。」

すーっと息を吸った、目をつぶって頭の中で奏くんのギターの音を思い出すように静かに声を出した。

聴きなれたあのメロディーを、自分で紡いだ声で。

1番離れた場所にあるから誰にも聞こえない、ここまで来るのに遠いって思ってたけどこんな時いいかもしれないなぁ…なんて思いながら。