「ともりんって話してみたら普通だったよね」

「え!?ごめん、期待に添うような偉人じゃなくて!」

「あ、そこまで期待はしてなかったから大丈夫」

ピシッと指先を合わせた右手のひらを私の前に差し出した、キリッと眉を吊り上げながら。

「そうじゃなくて、普通に喋りやすいなって」

今度はその手をピースサインに変えて笑った。

「入学しても全然学校来ない人いるなぁって思ってたんだよね、かと思ったらしれーっと現れてさ」 
 
「あー…、それは春休みに自転車乗ってて坂道下ってたらブレーキ壊れてるのに気付かなくてそのまま…」

向かいの壁にドォン!的な。
体中痛いし、足は捻るし、ぶつけた肘からは流血するし…でなんだかんだ学校へ入学するのに1ヶ月も遅れてしまった。

「やっと学校行けた時にはもう仲良しグループが出来てて、完全出遅れちゃって…もう気配消すしかないかなってなって」

「ともりんってもっと変わった子なのかと思ってたら、シンプルに不運な人なんだね」  

「…しなのちゃんはストレートで喋りやすいよすごく」

案内所の前には大きなカゴが並べてあって、鍋やまな板それぞれ分別して入れるようになっていた。
持って来たものを順番に仕舞って、片付ていく。

「だから話しかけてよかった!」

木べらをカゴに入れたしなのちゃんが口角を上げたニッとした表情をして私の方を見た。 

なんだかその表情に照れてしまった。