「昨日はごめんね」

すぐ次の日会ったんだけど。

うん、思ってたより早いスパン。

たまにだと思ってたけど、こんなパターンもあるのか…だって私は毎夜アイス買いに行ってるんだからね。

「中学生じゃなかったんだね、ごめんね」

「あ、いえ…」

そんなハッキリ謝られるとそれもなんかあれなんだけど、あんな格好してた私も悪い気がするし。今日もアイス片手にTシャツ短パンだし。

「大丈夫!私も態度悪くて、ごめん…なさい」

お兄さんの前に立って少し頭を下げたら、そんな私を見てくすっと笑った。

小さく笑う様子はとても静かで、細める瞳がすごく穏やかだった。

「隣、座らない?」

トンッと左手で開いた場所を示した。
コクンと頷いて、ゆっくり隣に座った。

すぅっと呼吸するように指をギターに添える。


この瞬間に、なぜかドキドキした。

今から奏でられるメロディーに心が疼いて。

お兄さんの指から流れるように溢れ出す、スルーっと耳から流れ込んで全身を纏うように私を夢中にさせる。


やっぱ何度聞いてもいい曲過ぎる!!!

是が非でも音源を手に入れたい!

いつでもこの曲を聞きたい!聞いていたい!!


「ねぇねぇ!この曲って何て曲?誰が歌ってるの?」

弾き終わった瞬間、食い気味で聞いちゃった。どうしても知りたかったから。

「めっちゃいい曲だよね!私初めて聞いたんだけどこんな感動した曲初めて!これって歌詞はある?誰が歌って…」

興奮し過ぎて早口になっていた。
しかも聞いといて私1人が喋ってるっていう。

コホンッと咳払いをして、改めて聞き直した。

「…有名な人?じゃないよね?洋楽…とか?」

心を落ち着かせて、まだ一言も喋っていないお兄さんの方を見た。

「誰の曲でもないよ」

ベンチの後ろに立っている街灯の光りが眩しい、ちょうどお兄さんの顔を照らしていて。

「俺が作った曲だから」