折原さんが丁寧に作ったカレーはおいしくて、煮込むのに時間がかかるって言ってたジャガイモはほくほくでカレーに馴染んでいた。

少しだけジャガイモを先に茹でてたからきっとそれで他の食材とも合うようになったんだ、すぐに機転を利かせてくれた折原さんのおかげで。

「ともりん、私も行くよ!」

使い終わった鍋やまな板を返しに行こうと案内所に向かおうとするとしなのちゃんが追いかけて来た。

「これ案内所の前のカゴに入れるんでしょ?」

そう言って鍋の中に放り込んでいたまな板とお玉と木べらを取った。

「ありがとう」

「1人じゃ大変でしょ、言ってくれたら手伝ったのに」

そんなに重いわけじゃなかったから平気かと思って、でも声掛けた方がよかったかなつい1人でいるのに慣れ過ぎちゃって。

「ともりん、うちらのグループでよかった?」

「え?」

「私が強引に誘っちゃったけど本当は嫌だったかなって」

「全然!そんなことないよ!むしろありがたいし嬉しいしほんとに…!」

隣を歩きながら目を大きくしてガンを飛ばすみたいになっちゃった、必死過ぎたかも。

「そ?ならよかった!」

でもそんな私にしなのちゃんは笑ってくれた。

「…しなのちゃんこそ、私誘ってよかった?」

「なんで?」

「だって…」

折原さんは…どうだったかなって、しなのちゃんと2人のが…よかったかなぁって。

すぅっと顔の向きを前に戻すると、案内所が見えて来た。

「私はともりんと友達になりたいって思ったから」

「…っ」

「思っちゃったんだよね、あの歌声聞いて。やばーいこの人!どんな人なのか話してみたい!って」

誰かに聞いてほしいわけでもなかったけど、そんな風に思ってもらえることもあるんだ。

あれはただ成り行きで歌ったに過ぎないのに。

「だから私はもっと仲良くなりたいよ」

そう言って笑ったしなのちゃんに、大きく頷いて返した。


でもきっと私1人ではあんなことできなかった。

できなかったし、あれがなければこうしてしなのちゃんと話すこともなかった。


あの時、奏くんが手を差し伸べてくれなかったら…