「…どうだった?」

ギターを弾き終えた奏くんがすぐに感想を求めるように振り向いた。
 
「なんとなく…ほっとけないメロディーだった」

「え、何それ?どんな感想?」

くすくすと笑って、また戻っていった。

え…感想今のでよかったの?
自分で言っといて結構意味わかんない感想だったとは思うんだけど。

「いいね、その表現。気に入っちゃった」

ニッと笑って顔だけこっちに向けた。

いつもはにこっとかにこりって感じなのに、そんなやんちゃな顔もするんだ。

それもなんか…
可愛いなぁって思えちゃって。

「駿二遅いねー、文化祭の話し合いするって言ったのに」

「文化祭の話し合いって曲決めるの?」

「うん、そうだよ。まぁ無難にブルスカかなー」

また手を動かした。ブルスカの曲を伴奏し始める。

確かに普通に上手いんだけど、こないだちょっと合わせた時だって歌いやすかったことはそうなんだけど、でも…

「奏くんの作った曲じゃないの?」  

そんな時こそ新曲じゃないないのかなって、何気なく思っただけだったんだけど。ピタッと奏くんがギターを弾く手を止めたから。

「軽音部で自分の曲やることないから」

こんな時は振り返らなくて目が合わなかった。

「え、そうなの!?」

「いつも流行りの曲が多いかな、その方が盛り上がるし。オリジナル学校でやるってなんかね、あれじゃん」

「でも始業式(あの)時は…っ」

もたれていた背中を離した。
一歩踏み出したから近付いた、その瞬間奏くんが振り返った。

「あれは灯璃が歌ってくれると思ったから」

ふわっと頬に熱を帯びた。 

やばい、ドキドキが加速する。

そんなこと言われたら嬉しくなっちゃうよ。

「あれは路上でしかやらないから、だから灯璃しか知らない曲だよ」

そんな顔で笑わないで。

「1回やっちゃったからみんな知ってる曲になっちゃったけどね」

勘違いしちゃう、私のものって思っちゃう。

「まぁいっか」


私を奏くんのものにしてくれたらいいのに。 
 

そんな風に思っちゃうよ。