ガチャッと鍵を開けて部室に入る。部室の中も、もちろん暑くてとりあえず窓を開けた。

「あ、そうだ灯璃。新曲聞いてよ」

窓を開けながら奏くんがこっちを見た。

名前を呼ばれたから必然的に目が合って、パチッと瞬きをした。

“ねぇ灯璃、これに歌詞付けてよ”って、言われていたけど結局それはそのままだった。もらった楽譜もそのまま家に置いてある。

「まだ聞いたことないでしょ?」

楽譜の読めない私はどんなメロディーかも想像が付かなくて、だけど気になって読めもしない楽譜を出してきては見つめてた。

手書きで書かれた音符や記号を見て、これからどんなメロディーが流れてくるのか考えながら。

「灯璃に聞いてほしいってずっと思ってたんだよね」

スクールバッグを床に置いて、その代わりにギターを持ってパイプ椅子に座った。

今から奏くんが新しく作った曲を聞けると思うとちょっとだけ身が引き締まる感じがして、隣に座るのはやめておいた。

そのまま開いた窓にもたれながら少し後ろから奏くんのギターを弾く姿を見た。

トントンッとリズムを取って、奏くんの手が動き始める。


一音目から違った。


前の曲と、全然…

前のはこう、ぎゅーっと締め付けて来るようなえぐられ方をしたけど…

今回のはもっと繊細な、明るいんだけど、でも寂しような気持ちにさせる。

奥行きがあるようなもの寂しさと、それなのに光りを見ているような…


こんな曲も作ることができるんだ。



すごいね、奏くんは。