あんなことを言われて嬉しくないはずがなくて、もう気付いてしまったんだからそれは顔にも出るし気分も上がるし…

あんなにどーでもよかった学校が今楽しみで仕方ないなんて夏休み前の私には考えられなかった。

「…あ、鍵開いてない」

それがわかりやすく行動にも出ちゃって、張り切ってるみたいで恥ずかしい。

部室1番乗りかぁー…

ガタガタとドアが開くか試してみたけど、誰も来てないみたいで開かなかった。

そっか、いつでも開いてるわけじゃないよね楽器も置いてあるし。

「……どうしよっかなぁ」

鍵のことは何も聞いてないし…、今日は部活するって言ってたから待ってたら来るかな。

廊下中に充満していたもわもわした空気が暑くて窓を開けた。こっちから見る景色は山しかなくて、気分的には落ち着きそうな気がした。

開けないよりは全然いいかな、日陰だから涼しい風も入って来るし。

意味もなくぼぉーっと外を見て揺れる葉っぱを目で追っていた。

昨日さっそく駿ちゃん先輩からLINEが来た。

明日は文化祭の話し合いだって。
軽音部なんだから演奏するんだよね?始業式の時みたいに、みんなの前で。


私も歌うことになるんだ、もう一度ステージの上で。


「灯璃!」

軽音部部室と書かれたタグの付いた鍵を持った奏くんがやって来た。

「早いねー、部室開いてなかったでしょごめんね」

「ううん、鍵って職員室?取りに行った方がよかったかな?」

「ううん、基本は俺が行くよ。部長だからね」

ドヤァと顔をしてグッと親指を立てながら言われたんだけど、そっか…そうだった奏くん部長だった。 

今の反応からすると部長なこと気に入ってるんだね、たぶん。