―ガラガラガラッ 


大きな物音を立ててドアが開いた。

「また廊下に楽譜落ちてましたよ!」

ピラッと1枚の紙を持ってふぅっと息を吐きながらやって来たのは…

「あー、藍ちゃんありがと~!奏また落としたな!」

鮎森先輩が楽譜を受け取って奏くんに渡した。


藍ちゃん、なんて呼ぶ関係なんだ…?


もしかして軽音部なの?
でも2人しかいないって言ってたし…

私はというとなぜだか気まずくて、でも目が合っちゃったから何か言った方がいいのかなって軽く会釈でもしようかと思った。

「あの、折原さん…っ」

「望月さん…」

キリッとした瞳にちょっとだけ怯みそうになる。背も高いから緊張しちゃうんだよ。

「今日から灯璃も軽音部に入ったんだ」

奏くんが折原さんに紹介するように右手を私に向けた。

「灯璃…?」

さらにドライになった目でじっと見られた。

え、何!?何か…っ

「って言うんだ、望月さんって」

「は、はい!そうです!!」

あ、そうだよね!?
名前知らないよね、私の下の名前なんか誰も知らないよね!?

「藍ちゃんたち同い年じゃん!え、そこ敬語なんだ!」

鮎森先輩がキャッキャ笑ってる。 

やめて、事立てないで余計気まずくなるから!

「灯璃と藍はクラスは違うの?」

何気なく奏くんが聞いた。

ただ会話の流れで聞いたことだとは思う…
んだけど。


“藍”って呼ぶんだ。


鮎森先輩は“藍ちゃん”だったのに。


私だって、“灯璃”って呼ばれてるけどなんか…っ