ジャンッ、と最後はギターの音で締めくくられた。

うん、普通に歌えた。
いや、場慣れの甲斐あっていつもより上手く歌えたかも。

歌う態勢だけは身に着いたかもしれない。

「灯璃ちゃん!」

「は、はいっ」

「いいじゃん上手いじゃん!」

ワッと目を見開いてぐっと体を前に出した。持っていたギターを落とさないように抱え込んで、座ったまま大きく開いた目でこっちを見た。

「何よりその堂々と歌う姿勢がいい!奏、すげぇー子見付けて来たな!!」

「うん、いい子なんだ」

「おぅ!なんか会話かみ合ってなくね!?」

堂々と歌えてるのはいろいろあったからで、そこを褒められるとは思わなかった。しかもそれを聞いて何を言えばいいのかなって…


ふと隣を見れば、奏くんが目を細めて笑っていたから。


「灯璃」


ドッ、と鳴り始めた心臓の音が体中に駆け巡る。


「軽音部、一緒にやらない?」


部活なんてやるつもりなかった。

私に軽音部の、ましてやボーカルなんてできるわけないって思ってた。

でもそんなこと考えるより先に、体が動いちゃった。

コクンって私の知らないうちにもう決まってたみたいに。


「よっしゃーーー!じゃあ灯璃ちゃん入部決定ね!?ありがとう、ようこそ軽音部!」

えっと…鮎森先輩だっけ?
ずっと元気でずっとテンション変わらない人なんだな、今もサッとギターを置いて体全体を使って喜んでくれてる。

「じゃあグループ名考えよ!今の神木鮎川はもう使えないし、てか俺は変えたいんだ一刻も早く」

カラカラとホワイトボードのキャスターを引いて持って来た。キュポッとペンのキャップを外し、ホワイトボードにグループ名案と書いた。

「はい」

「はい、奏くん」

「神木鮎川灯璃」

「却下!奏くん、君音楽の才能はあるのに他の才能皆無だね」