「あ、でも大して活動はしてないよ!そもそも楽器もこれしかないし軽音っていうか今はアコギ部って感じで!」

「……。」

「週2回、火曜日と木曜日!他は自由で来てもいいし来なくてもいい、大会とかはないからたまに行事でやったりするけど…次は11月の文化祭かな!」

ここまでわーっと1人で一気に話し、まだ私も奏くんさえも何も言ってなくて間を余すことなく話しているのをひたすら聞いていた。

「俺らのクラスもその話題で持ちきりだったんだよ、軽音部にすごい新人入ったって!俺も休んでる場合じゃなかったな~、聞きたかったわ!」

全然そんなつもりじゃなかったんだけど、てゆーかいつだって私はそんなつもりで歌ってるわけじゃないんだけど…そんな風に言われるのは、嬉しくないわけなくて。

「ちょっと、ほんのちょっとでいいから歌ってみてくれない!?」

置いてあったギターを手に取ってパイプ椅子に座った。

「じゃあ俺も弾こうかな」

同じように奏くんがギターを持った。座らずに私の隣に並んで。

「灯璃ちゃん、BuleSky(ブルースカイ)知ってる?ブルスカ!」

「あ、はい!知ってます!2人組の…」

「そうそう、じゃあブルスカの…あれでいっか!新しいやつ!」

流行りの曲なら私も知っている、最近ちょこちょこテレビに出てる昔は路上ライブもしていたっていう男女のデュオ…新曲は結構聞いてるからたぶんわかる。

「じゃあいくよ!」

すっかり歌うことに慣れちゃって、歌ってと言われたらなんの躊躇なく歌えるようになっていた。
あんなステージで歌ったんだ、この人数の前で歌うくらいなんてことなくて、もはやのびのびと歌えるぐらい忍耐までついちゃってた。

でもやっぱり奏くんの曲の方が歌いやすいなー…