「灯璃、軽音部入らない?」


いきなり呼ばれた軽音部の部室で、一言目に言われたのがコレだった。


え、突然も突然じゃない?
なんの前フリもないの!?


授業後、帰ろうと思って下駄箱でスニーカーに履き替えようとしていたら奏くんに呼び止められた。私が来るのを待っていたらしい。

そのままちょっと来てって言われて辿り着いたのがここ、玄関から1番遠いところにある校舎の1番上の階の1番右端にある狭くて暗い教室。なんで暗いかと言えば蛍光灯が1個死んでるから。

窓際の壁にピタッと長机がくっ付けられ、そこにパイプ椅子が2つ、隣にはキャスター付きのホワイトボード。

たぶんあれがアンプ?ってやつだと思うんだけど、それとアコースティックギターが2台置いてあった。

「奏!それはいきなり過ぎじゃね!?困ってんじゃん」

パイプ椅子に座っていた茶髪で学ラン全開きの男子生徒が立ち上がって近寄って来た。

「俺、軽音部副部長2年の鮎森駿二(あゆもりしゅんじ)!昨日はごめんね、ちょーっとお腹痛くてね!学校来れなくてね!」

あ、この人が始業式休んだ軽音部のもう1人…
え、てゆーか今副部長って言った?てことは部長は…

チラッと奏くんの方を見たらにこっと微笑みで返された。


部長なんだ奏くん!なんか意外!

ちょっと、いや結構ふわっとしてるから…


「今さ、ちょうどボーカル探してたんだ!俺らギター弾くから真ん中で歌ってくれる女の子がいいなーって思ってたんだけど、昨日の演奏超盛り上がったから!」

ハキハキと大きな声で話す人で部室に響いていた。

「まぁ俺休んでて聞いてないんだけど、奏がボーカルにぴったりだって言うからね」

今現在帰宅部の私、めんどくさいから部活は入らないでおこうと思っていた。

私を部活に誘ってくれる人がいるとも思わなかったけど。