ずっとドキドキしてた。

だけど、私をドキドキさせたのは体育館のステージでもなく大勢の観客でもなくきっと…



1人しかいない。



静かに笑う姿がずっとまぶたに焼き付いて離れないから。




「望月さんってめっちゃ歌上手いんだね!」

始業式の日から少しだけ私の周りが変わった。いつもは教室の片隅で息を潜んで生活していたのに、元気で明るくて副級長までやっている栗本さんに話しかけられるなんて…名前だって昨日までは知られてなかったのに。

「すごかったよ、びっくりしちゃった!」

学校に来ていつも通り隅っこの席でスーッと気配を消しながら席に着こうと思ったのに、教室に入った瞬間話しかけられて私がびっくりしてる。

「感動した~!」

「ありっ、がとうっ」

おかげで声がどもっちゃってしょーがない。普段学校で話すことなんかないんだもん。

「あれって何て曲なの?私初めて聞いたんだけど!」

「あぁ、あれはそっ…神木…先輩ってあのギター弾いてた!先輩が作った曲で」

確か奏くんの苗字は神木だった…はず、同じ学校だとも思ってないし先輩だとも思ってなかったから奏くん呼びが定着しちゃってた。

「オリジナルなんだ!?すごいねっ!!」

私が学校に興味なさ過ぎたせいなのか、今までもあぁやってステージに上がることってあったけ?

私の記憶ではないけど、あった…のかな?


でもあの曲は駅前のベンチでしか聴いたことない。