奏くんの目を見たらもう離せなくって、気付いたらコクンと頷いてる自分がいた。


ドキドキと心臓の音を聞きながらワクワクしている自分が。



もう一度、私もあの世界に行けるのかなー…



って手を引っ張られるまま、体育館のステージに上がってすぐに後悔することになったんだけど。


昨日と全然人数違う!規模やば!多っ!!!


言っても昨日は田舎の駅前、夏祭りだったとは言え10数人…多く見積もっても20人ぐらいだった。

でも今日は高校の始業式、1年から3年まで全校生徒500人ぐらいいるよね!?


そんな大勢の前で歌うの!?

えーーーーーーっ


用意されたスタンドマイクの前に立たされた。

昨日はマイクもなかったのに。

繋がれた手も離されてもうワクワクのドキドキじゃない、ガッチガチのバックバクだった。


わぁーーーーーやばーーーーーーっ!

どうしよ~~~~!?


でも、もう今更歌わないって状況でもない…っ 

しかもなんかざわざわしてるし!

わかる、わかるよ!

クラスの人にも名前覚えられてない私がね、あいつ誰状態でステージに上がってるんだもんね!?


やばい、下を向いちゃう…!


「灯璃っ」

マイクの前ですくむ私に隣に立つ奏くんが呼んだ。


にこっと微笑んで、うんと頷いた。


せーのっ!の声と共に奏くんがギターの弦をはじく。

そーいえば何の曲をやるのかとか全然聞いてなかったけど、1小節目のメロディーですぐにわかった。



奏くんが作ったあの曲だ。



ということは私はラで歌うの!?

今日も!?

こんな大勢の前で!?

「…っ」