「え、同じ高校だったの!?」

同じ歳ぐらいかなってなんとなく思ってたけど、同じ高校とは思わなかった。

あ、でもその可能性は全然あったかあんなとこで演奏してるぐらいだもん区域一緒でも…

「てゆーか先輩だった…んですか!?」

足元を見てハッとした。

うちの高校はスリッパ使用で、学年ごとに色が違うから。1年生だったらえんじ色なところを奏くんのスリッパは青だった。

2年生の色だ!!!

「ねー、灯璃と一緒だったんだ気付かなかったね」

それは気付かないよね、学年違うんだから。関わることほとんどないもん。

「ねー、びっくり…ですね?」

動揺して質問系の語尾を付けちゃうぐらいに、Tシャツ短パンでしか会ったことなかったから制服姿で会うとどこかこそばゆように思えて…

あと先輩だったし、言葉遣い難しい。

「いいよいいよ、そんなの。敬語とかいいよ」

私の心を読むように奏くんが言った。

「灯璃何してるの?もうすぐ始業式始まるよ」

「あ、うん!そうだよね、そう…」

そう言われてふいっと視線を逸らしてしまった。
落ち着かない瞳が左右に揺れて、奏くんが不審そうに首を傾げた。

「灯…っ」

体育館のドアからひょっと女の子が出て来た。

「あ、いた!も…もち?」

「も、望月です!」

出て来たのは同じクラスで、副級長の栗本(くりもと)さん。
私がいないことに気付いて呼びに来てくれたみたいだった。

「そう望月さん!あと望月だんだけだから、早く!」

でも、…あんまり見られたくなかった。


奏くんに、こんなとこ。

クラスの子に名前すら覚えられてないなんて。


栗本さんがスタスタと戻っていく、後ろをついて行かなきゃ…せっかく呼びに来てくれたんだから。

だから…