繋いだ手を離した奏くんがギターを持ってベンチに腰掛けた。

心臓がドキドキうるさい。


本当に歌うの?

歌えるの?


全然自信なんかないけど、周りを見ることもできなくてまだ前すら向けてないけど…


奏くんと目を合わせた。


うん、と奏くんが頷いた。

優しい瞳で私を見ながら。


右手で胸をさすって、すぅーっと息を吸った。

乱れた呼吸を整えて、もう一度奏くんと目を合わせる。


そして、私も頷いた。


奏くんがギターのボディをトントントンと叩いた。

そのリズムを聞いて目を閉じる、奏くんがギターに触れる音を感じて…


心臓の音を消すように声を出した。

聴き慣れちゃったメロディーに歌を乗せる。

聴き過ぎちゃって奏くんが強弱を付けるタイミングも、音が変わる動きも、どこで声を入れたらいいかもわかってしまって。


やっぱいい曲だな、どうしたらこんな曲が作れるんだろう。

私の“ラ”ではもったいないよ。



「~っ♬」


歌が終わる曲が終わる、実際は歌うことよりも終わってしまう方が怖かったかもしれない。

聴いていた人たちはどう思ったかな、変だったよね!?おかしかったよね…!?

ブーイングとか来たらどうしよう…!

きゅっと目をつぶって前を見ないように、どうしても前が向けなくて歌い終わりに俯いてしまった。

このあとどうしたら…!?