奏くんに連れられて戻るとまだベンチの前には人が集まっていた。

咄嗟に奏くんがそこにいた女の子たちにギターを見ててもらえるよう頼んだらしくて戻って来るのを待っててくれたらしい。

そんなとこにのこのこと入っていくのは…


ちょっと怖かった。


しかも手!

まだ手…!


繋いだまま…っ!!


奏くんに手を引かれて、掻き分けるようにベンチの前に立った。

周りの様子を見ることができない私は手持無沙汰だった片方の手でTシャツの裾を握りしめて、その手をひたすら見ていた。

全然前見れないんだけど…
どんな風に見られてるの!?

なんかコソコソ聞こえるし、絶対睨まれてるとしか…!

「じゃあ、灯璃」

前を見るのは怖かったから奏くんの方を見た。

「何!?何歌うの!?」

「やっぱあれじゃない?俺が作った灯璃が好きだって言ってくれた」

「それ歌詞なくない!?」

一応小声で、てゆーか大きな声で話すこともできなくて。

必死に奏くんの目を見ながら訴えた。

「テキトーに歌詞付けてよ」

「えっ!?」

なのにサラッと返して来る。

なんて言う超無理難題…っ!

「じゃあラでいいよ」

それもめちゃくちゃな!

頭の中がごちゃごちゃで自分でもわかるぐらいテンパった顔をしていた私に奏くんが近付いた。

そぉっと頭を撫でるように、私にしか聞こえないぐらい小さな声で。

「大丈夫だから」

そう言って微笑んだ。