「私ね、奏くんのおかげで歌うことの楽しさ知ったの!」

「…。」

「奏くんのおかげで友達も出来た!部活にも入れたし、先輩とも仲良くなれたし、学校が楽しくなった!」

少し前の私には考えられない、こんなにいろんなことがあるんだって毎日朝起きるのが楽しみになった。



「それは全部そこに奏くんがいるから」



そして、好きな人ができた。


全部全部奏くんのおかげ、奏くんがいてくれるから。


「奏くんがくれたんだよ、ありがとう」


あの夜、出会えてよかった。

あの日、心が離さなかったのは奏くんの音だけじゃない。


「だから奏くん…っ」


ずっと離したくないよ。


離さないでいてよ。


「路上ライブしよう!冬休みだから!!」


さらに奏くんが目を丸くした。

あ、これも予想されてなかったことだった。

でもそのあと笑ったから。

ふふって、目を細めて嬉しそうに。

「ガリガリ君寒くない?」

「え!?私ガリガリ君買う前提!?」

「だって灯璃、夜はいつもガリガリ君じゃん。もうあれないとしっくり来ないよ」

「じゃ、じゃあ肉まんは!?私肉まんも好きなの!」

「何、それ」

声を出して奏くんが笑ってた。

ふーん、そっかそんな声で笑うのか…
へぇ、可愛いじゃんそんなの。