「奏くんが行きそうなとこは…ないの?」

「全部お父さんが探してくれたみたいだけど全然…」

「そっか」

「うん…」

きっと私が思い付くようなところはもう全部…あとはどこがあるんだろう?
公園、コンビニ、カラオケ…そんな普通な場所しか思い浮かばないなぁ。

もっと他に何か…

奏くんの思い入れある場所とか?

奏くんのお気に入りの場所とか、そんな…

でも奏くんの好きな場所って…

“…最後にはそんな家までなくなった”

「あ!家だ!!」

思い出した言葉につい大きな声を出してしまった。

「家?」

「うん、奏くんの家!」

「それはここよ」

「あ、そーなんだけど!そーなんだけど、あの…っ」

どう説明したらいいかわからなくて気持ちばかり先走りそうになった。

今はもうないんだよね!?でも前はあったんだよね!?

「折原さん!“奏くんの家”があった場所ってわかる!?」

「…っ」

それは私にはわからない。
話を聞くだけじゃそれがどこなのかは、でもきっと折原さんは知っている。

「こっちよ」

グイッと私の手を引いて折原さんが走り始めた。手を引かれるまま走った。

必死に駆けて行く折原さんに置いて行かれないように夢中で足を動かした。

奏くん 


奏くん… 


奏くん…っ! 


「もうすぐよ、あの角を曲がって真っ直ぐ行ったところが奏の家のあった場所…!」


待ってて…!!