「……。」

「………。」

「……。」

折原さん家の隣にはどちらも家が建っていて、まだ電気が点いていた。外は真っ暗でヒューヒューと風が吹いている。

「…奏くん、どこ行っちゃったのかな」

さっきもう1度駅の方に行くって、折原さんのお父さんが言ってた。

じゃあ路上ライブしてるわけじゃないよね、駅の方には行ってないんだ。あとは学校とか、バ先とか…

「今日、奏…バイト休みだったみたいなの」

「え…?」

「私たちにはバイトだからクリスマス会に行けないって言ったけど、本当は休みだったんだって」

“クリスマス会の日、バイト休みにしてくれるって”

やっぱり休みのままだったんだ。
バイトになったって、そうじゃなかったんだ…。

「学校からそのままバイトに行ってたと思ってたから、でもバイト先に電話したら今日は来てないって言ってて…家にも帰って来てないし、連絡も取れないし、どこにいるのかも全然わからなくてっ」

折原さんが涙を拭った。呟くように声を出した。

「本当に家を出て行くつもりだったのかな」

「……っ」

きゅっと折原さんの手を握った。

手を繋ぐようにして、何も言えなかったけど。


奏くんどこにいるの?


何してるの?


無事でいるの?


折原さんを泣かせたくないんじゃなかったの?



早く帰って来てよ、ねぇ…!