「折原さん…!」

「望月さん…っ」

自転車を走らせて折原さん家の前まで来た。
ここが折原さんの家であり、奏くんの家…

大きくて立派な家だった。

「奏くんは…!?」

「ううん…っ」

家の外にいた折原さんの前で自転車を降りた。その隣にいた折原さんのお母さんが電話を掛けていた。

「うん、うん…うん、わかった。じゃあまた連絡して」

「奏…いないって?」

「うん、お父さんもう1回駅の方見て来るって」

「そっか…」

きっと折原さんもお母さんも待ってられなくて外にいたんだと思う。

「えっと…、こちらは?」

お母さんと目を合わせた。ピシッと背筋を伸ばしてあいさつをした。

「望月灯璃です!あの、折原さんのクラスメイトで同じ部活のっ」

「友達よ」

「!」

「私と奏の」

友達…になれてたんだ。
へぇ、そっか…

いや、今喜んでる場合じゃない!

「お友達も来てくれて…ごめんね、こんな遅くにね。まったく奏はどこ行ったの!みんなに心配かけて…」

折原さんのお母さんは奏くんのことを“奏”って呼ぶんだ。それがなんだか家族を感じた。

「中入って、寒いでしょ」

「あ、私も探しにっ」

「こんな時間に女の子が危ないからダメよ。それに奏が戻って来た時、誰か家で待っていた方がいいから」

「……。」

気持ちを抑えられず思わずここまで来ちゃったけど、来ただけで何も…

「じゃ、じゃあ!ここで待っててもいいですか?」

「寒いから中でっ」

「待っていたいんです!」

少しでも早く奏くんの顔が見たい。

奏くんが戻って来た時、安心させてあげたい。

「私もここで一緒に待ってるわ」

「折原さん…っ」

「私だって何かしたい!待ってることしか出来ないなら私もここで待ちたい!」

「藍までっ」

「だってもし奏が、奏に何かあったら…っ」

折原さんの瞳から涙がこぼれる。
困った様子でお母さんが折原さんの背中を撫でた。お母さんだって不安そうな顔をしてるのに。

「わかったから、じゃあ何か温かい飲み物でも持って来るから。絶対どこにも行かないようにね、ここで待ってるのよ」

はぁっと息を吐いてお母さんが家の中に入って行った。