「何度見ても可愛いマグカップ…」

その日の夜、さっそくマグカップを使ってココアを飲んだ。それだけでいつもよりおいしく感じた。

このココアってこんなにおいしかったっけ?

リビングのソファーに座って、ただついてるテレビを見て、ココア飲んだら歯磨きしようかなもうそんな時間だよね。

壁にかかった時計を見れば11時を過ぎたとこ、お風呂も入ったし寝る準備でもしようかな~でも明日から冬休みか、もうちょっと夜更かししても…でもこれといってすることないからなぁ。

ぼぉーっとしてると考えちゃうから、今どうしてるのかなって何してるのかなって…

連絡、してもいいかなぁって。


―ブブブブッ、ブブブブッ


「わっ」


ちょうど隣に置いたスマホを手に取ろうとした時だった、着信が鳴った。

で、電話!?
なんて普段かかって来ないのに、誰…!?

「…折原さん?」

折原さんが軽音部に入部した時にここだ!と思って交換を申し入れた。

いいよ、って教えてくれたけどそれから特に連絡取ることはなくて…
まぁほぼ毎日会うからLINEは必要最低限だしこうやって電話が来ることなんて…


ドクンッと心臓の音が鳴った。


大きく胸の奥で響くように。


「も、もしもし…?」

恐る恐る電話に出た。

「望月さん!?今奏といる!?」

「え、いないけど」

「いな、いんだ…じゃあどこだろ、あとはえっと…」

折原さんのうろたえる声に嫌な予感がする。

電話の向こうが騒がしくて、たぶん折原さんのお母さんが何か言ってるみたい…それくらい慌ててた。

だから電話を持つ手が震えちゃった、何が起きたのかなって心配で。


「…奏くんどうかしたの?」


ごくんっと息を飲んだ。


「家に帰って来ないの!」


電話を切ったらすぐに着替えた。

さすがにこんな部屋着じゃ外に出られない、あとはコート着てマフラーして…

あ、スマホ!スマホ!

コートのポケットにスマホを入れて家を飛び出した。

お母さんがこんな時間にどこ行くの!?って叫んだけど、居ても立っても居られなくてすぐ帰って来るから!とだけ返した。

自転車に乗ってグイっとペダルを漕ぐ。

きっと外は寒かった。

だけどそんなことがわからないぐらい焦ってた。



奏くん、どこ行っちゃったの?


今、どこにいるの?


電話ぐらい出てよ、奏くん…!!!