「じゃあ俺鍵返して帰るから!」

みんなでお菓子を食べてジュースを飲んでプレゼント交換をして、あまり遅くならないようにと暗くなる前にクリスマス会はお開きだった。

1階まで一緒に階段を降りて、職員室への曲がり道で駿ちゃん先輩がばいばいと手を振った。

「望月さん、私トイレ寄ってくから先帰ってて」

「うん、わかった。じゃあばいばい!」

「ばいばい」

折原さんも別の方へと歩いて行った。

一緒に帰っても校門までだしね、そこから反対方向に帰るからここで別れても変わらないし。

暗くならないうちに家に着きたいなぁーなんて思いながら下駄箱へ向かった。

廊下は寒いな~部室も寒かったけど、歌ってたら暑くなって来たし平気だったんだけど。下駄箱なんて玄関のドア開けっ放しだから寒くてしょーがないよね。

ふぅっと気合いを入れて下駄箱へ、スリッパからスニーカーに履き替えようと自分の下駄箱を見た。

「…ん?」

何か入ってる…?

紙袋に入った何かが下駄箱に入れられていた。なんだろう?

これ…

そぉっと取り出して、紙袋を開くように中身を見た。

「あ、これ…!」

それは見覚えのある包み紙だった。

遠回りをして帰る途中にある雑貨屋さんの…っ

もしかしてと思って包み紙を剥がした。

この重さはきっと…っ


「マグカップだ…!」


“ねぇねぇ灯璃、これはどう?マグカップ、なら使い道あるよね”

あの日一緒に買いに行った、クリスマスプレゼントだった。

ちっちゃな2つの雪だるまがちょこんっと身を寄せて、1つのマフラーで仲良く眠ってるイラストが描かれたあの…


“これ灯璃欲しい?”

奏くんが選んだこれは…


「私へのプレゼント…だったの?」


“じゃあ俺が灯璃にプレゼントあげる”

最初からそうだったの?

私のために、一緒に…


「…っ」

緩くなった涙腺は寒さなんか関係なく溢れて来る。